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第九十六話 絶対信長殺すちゃん

 江戸城、最上階。

 薄暗い部屋には、小太りの男――徳川家康が一人正座して目を閉じていた。


 精神を集中させているようで、徳川家康は微動だにしない。

 先程からずっとこの態勢のままである。


 少しして、彼はようやく目を開いた。

 ちょうど魔王たちが城内に侵入したタイミングである。


「……想定通りですなぁ」


 徳川家康は笑った顔を崩さない。

 ただし、笑っているのにまったく楽しそうには見えなかった。


 笑顔は徳川家康の仮面である。

 彼の感情は誰にも見抜くことはできない。


 暗闇の中で、徳川家康はゆっくりと立ち上がった。


「烏天狗、出てくるのじゃ」


 その言葉で、何もなかった空間が歪んで何者かが姿を現した。

 大きなくちばしと黒い羽根を持つそいつは、烏天狗と呼ばれている妖怪だ。


「すぐに客人が来る。用意をしておきなさい」


 それは予知にも似た言葉である。


 徳川家康は魔王たちの状況を把握しているようだった。更に。ここへ来ることも断定している。


 これは『徳川家康』の継承者が持つ力の一つ、【先見の明】だ。

 ざっくり説明すると『見る』力である。


 徳川家康の目は全てを映す。

 遠くの状況も、そして未来の光景も、だ。


 見るものに応じて消費する体力が変わるので無制限には使えないが、使い勝手の良い力である。


 今回徳川家康は、魔王たちの状況と少し先の未来を見たようだ。


「…………ああ」


 徳川家康の言葉に烏天狗は頷く。

 懐から団扇を取り出して、静かに魔王たちの到来を待つことにしたようだ。


「さて、君も一緒じゃ」


 と、ここで徳川家康は部屋の隅に転がっている『人形』を抱え上げる。

 和服を見に纏う、長い黒髪の人形だ。


 これは、とある力が込められた『依り代』である。


「『明智光秀』……期待しておるぞ」


 呼びかけに、人形は口を大きく開く。


「ノ、ブ、ナ、ガ、コ、ロ、ス」


 無機質な言葉は、聞く者の背筋を凍らせるような音を響かせた。

 しかし徳川家康は表情を崩さない。


「織田信長……君は果たして、生きることができますかな?」


 笑顔のまま徳川家康はその時を待っていた。

 決戦の時はすぐ迫っている――




 

 一方その頃、魔王軍含む織田信長精力は階段を駆け上がっていた。

 そろそろ最上階に到達しようとしている。


 メンバーは最初より減っており、織田信長、豊臣秀吉、魔王、スケさんの四人である。


「おい、少なくなってるけど大丈夫かよ」


「心配は不要だ。徳川家康にさえ到達すれば良い。そこまでいけば我がどうにでもできるからな」


 魔王は自身の勝利を疑っていない。


「最初から我が下僕たちは捨て駒のつもりだったからな。何も問題はない」


 召喚した魔王軍は道中の邪魔を排除するためのものとして見ていたようだ。

 この戦力ならもっと戦い様もあるだろうが、単細胞な魔族らしい戦術である。


「……てめぇらには武将はいても軍師はいねぇんだな」


「策など力の前には無意味である」


「おう。そこまで言い切るんだったら、最後まで頼むぜ」


 そんな会話を交わしながら階段を昇っていると、すぐに最上階へと到達した。

 そこでまた、敵と遭遇する。


 奥の部屋へとつながる廊下で待ち構えていた敵は、二本の刀を持っていた。


「『宮本武蔵』を継承する者」


 言葉少なに名乗り、刀が構えられる。


「そこの骸骨のみ残れ。他は進むといい」


 宮本武蔵が敵意を向けていたのは、骨ネクタイのスケさんだけだった。


「……なるほどな。魔王、狸もどうやらてめぇと同じ考えだったみてぇだぞ。邪魔な奴だけを排除したかったみたいだな」


 ここまで来て織田信長は徳川家康の考えを察したらしい。

 明らかに織田信長勢力の力を削ぎに来ている。


 最初から、織田信長、豊臣秀吉、魔王の三人のみを徳川家康は相手しようとしていたようだ。


「好都合だぞ。ではスケさん、適当にやれ」


「お任せを。魔王様こそ、気を付けなされ」


 スケさんを残して、魔王たちは奥の部屋へと向かった。


 これで戦力は分断されたことになるが、先程の言葉通り魔王の足取りは自信にみなぎっている。


「勇者の居場所を吐かしてやろう!!」


 臆さず、そのまま扉を突き破って部屋へと侵入した。

 そこにいたのは、人形を抱えた徳川家康と烏天狗である。


「おい、勇者は――」


 と、魔王が勇者の所在を問いかけようとしたその瞬間には、もう相手が動いていた。


「烏天狗」


 徳川家康が呼びかけると、即座に烏天狗は持っていた団扇を振るう。


 刹那、空間が歪んだ。


「――っ! 妖術か……っ!」


 これは、烏天狗の持つ【神隠し】の力。

 勇者を誘拐した時と同じように、部屋に入ってきた一同は烏天狗に神隠しされたのだ。


 神隠しによって魔王たちが到着したのは、とある建物の中。

 そこには、眠っている二人の幼女を撫でている冴えない青年がいた。


 彼は突然現れた魔王たちを見て、ぽかんとしている。


「ぇ……魔王?」


 そう。ここは、勇者が誘拐されていた、本能寺という建物だった。


「勇者っ!!」


 魔王は途端に笑顔になって、勇者へと飛びつく。


「魔王っ!!」


 勇者も嬉しそうに魔王を受け止めた。

 少し振りの再会だというのに、二人は熱い抱擁を交わす。


 そのまま二人は我慢できなくなったのか、二人でキスをしようとしていた。

 とはいえ、ここは戦場である。


 もちろん邪魔が入ることになった。



「ノ、ブ、ナ、ガ……シ、ネ。シネシネシネシネシネシネ――シネェエエエエエエエエエ!!」




 そして、甲高い叫び声と同時に……炎が噴き出す。


 炎上した本能寺で、最終決戦が始まるのだ――

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 誤字報告、非受付なのでここに 中盤の、織田信長「精力」 →勢力
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