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第九十五話 五帝出陣

 江戸城へと侵入する魔王たち。

 外ではタマモを始め、シロとデビルが戦っているので人数も少しずつ減っていた。


 残るは、織田信長、豊臣秀吉、魔王、スケさん、五帝である。


「……真っ暗ではないか。それに、人の気配がない」


 城というからには誰かが生活していて当然だが、しかし灯りもなく人も見当たらなかった。


「いつもこうなのか?」


「んなわけあるかよ……おれはセフィラの力を発現する半年前まではここに住んでたんだぞ? その時は大勢いた」


「では、あえて人払いしているようだな」


「あの狸、絶対に何か企んでやがる……」


 魔族は基本的に力押しが戦術である。

 それが良いところでもあるのだが、からめてを取られるとどうしても後手後手になりがちだ。


「面倒な相手だ……構わずに進むとしよう。案内はできるか?」


「ああ、ついてこい」


 織田信長を先頭に一同は移動を開始する。

 城内には音一つない。それが返って不自然なほどに。


「…………」


 魔王も何か違和感を覚えているようだが、気付くまでには至っていない。

 これが勇者なら、とっくに感知していただろう。


 天井裏や畳の下、ふすまの奥に建物の影。

 至る所に、『ニンジャ』が潜んでいたことを……


「――【闇よ、襲え】!」


 魔王が察知できたのは、一人のニンジャが音もなく織田信長に忍び寄った時。

 今にも短刀が首に突き刺さろうとした寸前に、彼女はようやく気配を補足することができた。


 瞬時にセフィラの力を解放する。

 第八世界『ケテル』の寵児セフィラは、一つの闇を操る。

 代々の魔王が宿した闇は、死した歴代魔王の怨念だとも言われていた。


 それを、魔王はニンジャにぶつけた。

 闇は魔王の意を読み取ってニンジャへと襲い掛かる。


「…………っ」


 そのニンジャも本能的に危険だと悟ったのか、一瞬で織田信長から離れた。


「隠れていたかっ」


 ニンジャの存在を魔王たちが把握する。

 もう隠れる必要はなくなったので、潜んでいたニンジャたちが一斉に姿を現した。


 黒の忍び装束を纏う影が、部屋中にひしめきあう。

 カサカサと動き回る姿が異様だった。


「五帝!」


 魔王の指示に、控えていた五帝が動く。


「お任せあれ! 五帝よ、出陣!!」


 指示に独特なシルエットをした五人がニンジャに向かって飛び出した。


 一人目は両手が剣の『剣帝』ソードマン。

 二人目はスライムの『粘帝』スライムマン。

 三人目は炎にゆらめく『炎帝』ファイヤマン。

 四人目は顔全体が口の『食帝』タベルマン。

 五人目は白いコック帽をかぶる『料帝』コックマン。


 それぞれが五つの方向に散らばって、押し寄せるニンジャたちを跳ねのけた。


「こいつらは『上忍』じゃねぇか! ってことは、今おれを殺そうとしたのは……『服部半蔵』の継承者か!?」


 殺されかけて驚いていた織田信長は、襲ってきた敵の存在に気付いたようだ。


「忍者の血を継いだ徳川家康の家臣……忍者の組織を束ねているらしいぜ」


 服装は他のニンジャと同様の黒装束。

 しかし、より不気味な雰囲気を服部半蔵は醸し出している。


「おい、結局ばれたのか? 隠れてた意味ないだろうが」


 と、ここで奥からもう一人姿を現した。

 水色の羽織を着た中年のおっさんである。


 その背中には『誠』の文字が描かれていた。

 勇者がホドに来た当初に戦い、途中でフクさんによって【幻想遊郭】へ幽閉されていた『近藤勇』の継承者である。


「てめぇ、遊郭から出てたのかよ」


 幻想遊郭に匿われていた織田信長も、近藤勇が閉じ込められていたのはもちろん知っていた。

 まだ出られていないと思っていたようだ。


「どうにか、な。そこの陰湿忍者に助けられたんだ」


 服部半蔵が潜入して近藤勇にかかっていた幻術を解いたようである。


「……増えたが、五帝で十分か」


 魔王は近藤勇を確認したが、五帝だけで十分と判断したようで戦闘の人員を増やすことはしなかった。


「あの二人は貴様らがどうにかしろ、五帝」


「はっ。命に代えまして」


 料帝が深々と頭を下げる。それでも真っ直ぐにのびた白いコック帽は倒れないから不思議なものだった。


「ん? 五人はここで戦うんだな? だったらさっさと行け。将軍が待ってるぜ」


 と、ここで近藤勇が魔王たちに先へ行くよう促す。

 薄々察してはいたが、徳川家康が魔王たちを誘っているのだということがここで確定した。


「ちっ……」


「ふむ、難儀をしなくて良いのだ。行くぞ」


 織田信長は面白くなさそうだったが、魔王は気にせず先へ進む。

 こうして、服部半蔵率いるニンジャ隊と近藤勇を五帝が相手することになった。


「お前らが雑魚ではないことを祈ろう……少しは俺を楽しませてくれ」


 近藤勇は五帝を前に余裕そうである。

 彼には五帝が色物枠に見えていたようだ。


 しかし、その認識は間違いである。


「魔王様が先へ行ったか。では総員……楽にしろ」


 魔王軍が誰もいなくなったところで、料帝がそんなことを言う。


 刹那――殺意が場に溢れ返った。


「くそが……いちいちくせぇことやらせんなよ。いいから斬らせろ」


 ソードマンが荒々しく剣を振り上げる。


「なるほど、全部燃やせばいいんじゃないかな?」


 ファイヤマンの火炎が禍々しく膨らんでいく。


「あいつらのお肉、溶かすといい匂いしそうだなぁ~♪」


 スライムマンの零れた体液は、畳を溶かして煙を上げていた。


「た、べ……る。いただ、きま、す」


 タベルマンは我慢できなくなったように、自分の手をバリバリと食べ始める。


 そんな一同を前に、料帝だけが先程と変わらない態度でため息を吐き出していた。


「ふぅ……相変わらずのカス共め。演技でもさせないと、魔王様に失礼だからな。絶対に素の態度を魔王様に見せるなよ?」


 普段、五帝は魔王の前であまり多くを語らない。

 何か言うにしても、魔王が呆れるような演技っぽいことばかり言う。


 それは、五帝のリーダーである料帝が指示を出していたことだ。


 五帝のメンバーは、あまりにも……狂っている。


「ともあれ、敵だ。料理してやるぞ」


 料帝の指示で、五帝は一斉に動き出す。

 残虐に笑いながら、彼らは殺戮を開始するのだ――

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