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勇者だけど、魔王から世界を半分もらって裏切ることにした  作者: 八神鏡@ようあま2巻&霜月さんはモブが好き1~5巻
第三章

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第八十七話 休息

 魔王がユメノに連行された。

 どうやら仕事をサボりすぎていたようである。


 働くってやっぱり大変だなぁ……俺も昔は勇者として一生懸命働いていたけど、あの時もそういえば毎日が激務だった。もう二度と働きたくないものである。


 仕事の辛さは俺もよく理解できる。

 せめて、魔王が帰ってきたら精一杯労ってあげようと、そんなことを思った。


 さて、と。


「どうする? 魔王がいなくなったけど、君主奪還の話は進めるか?」


 俺は現在、ホドのセフィラである織田信長と一緒の部屋に居る。

 彼女から『力を貸してほしい』という依頼を受けているわけだが、魔族の王である魔王が居なくなってしまった。


「……これだと話ができねぇぜ」


 そう。魔王がいないと、話にならない。


 魔族を動かすのは魔王なのだ。俺だけがいてもしょうがなかった。一応、タマモも別の部屋にいるが、魔族は独裁的な世界なので彼女に決定権はないだろう。


 現状、魔王が戻ってこないと話にならなかった。


「ま、丁度いい。おれは少し燃費が悪くてな……休まねぇとダメなんだ」


「そうなのか?」


「小さいからな。魔王化もしちまったし、かなり疲労してる」


 なるほど。幼い彼女は未だ力を十全発揮することができないのか。

 まだ力が発現してあまり経ってないようだし、体も慣れていないのだろう。それはしょうがないか。


 魔王がいなくなったのも、ある意味でいうとタイミングが良かったのかもしれない。どのみち織田信長は休ませないといけなかったのだ。


「ねぇ、勇者! お酒はどこにあるのかしらっ? お酒よ、お酒!」


「勇者っ。あのねあのね、ミナと一緒にあそぼ―?」


 あと、俺にとってもタイミングが良い。

 何せ、酔っ払いとロリエルフちゃんがやって来ているのだ……こいつらの相手もしないといけない。まぁ、魔王は俺の息抜きのために置き土産として置いていったのだろうが。


「……おれが休んでいる間、てめぇらは自由にしてろ」


 織田信長も苦笑がちにではあるが、二人に付き合ってやれと言ってくれた。


「でも、お前の面倒は誰が見るんだ? 結構消耗してるんだろ?」


「あ? 心配してくれんのか? くはっ……気持ちだけ受け取っておくぜ。おれにも世話係はいるからな」


 そう言って彼女は、天井に視線を向けた。


「てめぇらになら見せてもいいか……おら、来い! 顔出してもいいぜ」


 声と同時、天井の板が外れて人影が姿を現す。

 そいつは、織田信長と同年齢くらいの女の子だった。


「こいつはおれの仲間、サルだ」


 茶髪の、快活そうな女の子が満面の笑顔を浮かべる。


「『豊臣秀吉』の力を継承してます、サルっす! 信長様の護衛とお世話を任されてるっす!」


 見た目通り元気のいい女の子のようだ。声にも張りがある。


「普段は姿を隠させて護衛を任せてる。まぁ、てめぇは気付いてただろうが」


「……まぁ、誰かいるなーとは思ってたけど」


 ニンジャか何かだと思っていたが、護衛兼お世話係だったようだ。

 俺たちが留守にしてても、彼女が織田信長の面倒を見てくれるということだろう。


「あ、これ返すっす!」


 ふと、豊臣秀吉は何かを差し出してきた。

 細長い形状の、これは……剣? あ、これは俺がさっき使ってた剣だ!


「信長様に危険がないように、【刀狩り】っていう力で奪ってたっす。勝手に盗ってすまないっす」


 ニコニコしているのだが、なかなかえげつない力だった。

 相手の武器を強制的に奪う力とは……護衛としてもかなり有能だろう。


 これなら、弱っている織田信長を心配する必要はなさそうだった。


「じゃあ、フクさんに声かけて出るか……」


「酒だー!」


「やったー!」


 無邪気……でもないか。聖職者の方は邪気にまみれているが、とにかく二人は喜んで声を上げていた。


 まぁいい。ニトとミナと遊ぶのも、好きではある。

 魔王が戻ってくるまでは、二人と一緒に過ごすのも悪くない。


「じゃあ、行こう。二人とも」


 そうして俺は、ミナとニトを連れて【幻想遊郭】を出るのだった。





 最上階にある部屋で、タマモと一緒に駒遊び……ショウギだっけ? なんかやってたフクさんにお願いして、俺たち三人は外へ出た。


 フクさんの話によると、帰りはどこかしたの茶屋で声をかければ良いらしい。それでこの【幻想遊郭】に戻って来れるようだ。

 ホド全体の茶屋はフクさんの【幻想遊郭】と空間が繋がっているとのこと。


 茶屋はそこら中にあるので、帰り道を心配する必要はないだろう。なので俺たちは自由に散策することにした。


「いやー……お小遣いまでもらってしまったな」


「これでお酒買い放題! 確か『酒蔵』に行けばいいのよねっ?」


 フクさんに酒を変える場所を聞けば、その辺にある酒蔵で買えると教えてくれた、店もあるらしいが、酒蔵に行けばもっと上質なものが手に入るとのこと。


 ついでにフクさんは気前よくお小遣いまでくれた。

 俺はお金を持ってないし、ミナは財布を忘れたみたいだし、ニトに限っては財布しかなかった。お金は全部使い果たしていたようである。


 フクさんは酒を買う分と、加えて余分にお金を渡してくれた。【幻想遊郭】に招き入れてくれたことといい、なかなか彼女は面倒見がいい。


 後で恩返ししないと……まぁ、遠慮してもしょうがないので、今は優しさに甘えてホドを楽しむことにしよう。


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