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第七十一話 第八世界『ホド』

「待つでござる! 拙者がホドの道案内を……え? いらない? お、お願いだから待って! サキュバスはもうイヤだぁあああああ!!」


「ユメノ、こいつらをしっかり見張っておけ」


「はーい。エッチな夢でも見せて、お待ちしてますー」


 何やら叫んでいるクノイチをユメノに任せて、俺たちはホドに向かう。


「すまないな。転移魔法は一度行ったことのある場所か、あるいは視認している範囲でしかできないのだ。さしもの我もホドには行ったことがない……世界店経由で行かせてもらう」


 ホドとは今まで疎遠だったので、流石の魔王も初めてらしい。

 なので、セフィロトの世界店という、各世界で空間が繋がっていると言われているお店を経由してホドに向かうことに。


 ただ、世界店経由だとお金がかかる。そのため仕方なく、最初は少人数で行くことにした。


 俺、魔王、そして案内人のタマモである。

 他のメンバーも連れて行こうとは思っていたのだが、まずは俺たちが様子見も兼ねて向かうことにしたのである。


「ヨウコソ。ココハ『ホド』デス。ゴユックリ」


 どの世界店でも同じ見た目の店主さんの言葉で、俺たちは世界を移動したことを知る。

 第一世界『ケテル』にある世界店から、第八世界『ホド』のある世界店にやって来た。


「二人とも、その恰好では目立つのじゃ。変装しておくといい」


 ついでに、世界店でホドの一般的な服装である『和服』を購入した。


 俺はタマモにオススメされて『羽織』を着ることにした。

 ゆったりとした衣服はあまり慣れていないが、少なくとも変な感じではないだろう。ついでに『刀』も購入しておいたので、武装も完璧だ。


 一方、魔王は『浴衣』を購入していた。丈が短いタイプのやつだ。

 相変わらず胸元ははだけているし、太ももはばっちり露出されている。布面積の大きい服はあまり好きじゃないらしい。


「どうだ? 勇者、似合うか?」


「可愛い」


「に、似合うかどうか聞いてるのだっ……可愛いなら、それでいいがな」


 照れる魔王も見れたので満足である。変装も終えたので、俺たちは早速外に出ようとした。


 しかしここで、俺はふと気配に気付いた。


「……外に誰かいる。気配を殺して身をひそめてるから、多分俺たちのことを待ち構えているな」


「ふむ、そうか。見張りがいるのは当然であろう……ここは他世界と繋がっている唯一の場所であるからな」


 世界店を見張っていない世界なんて、十あるセフィロトの世界でも人間界だけだろう。死霊族でさえ、世界店の周囲は戦力を固めていたからな……本当に人間って呑気である。


 それはともかく、どうするべきか。

 今回は単なる侵入というか、旅行である。戦争などが目的で来ているわけではないので、力で相手をねじ伏せるのはあまり得策ではないだろう。


 騒ぎになって、ホドの【サムライ】から狙われても困る。


「あちらも、我らには気付いているであろう。出たらすぐに襲われる可能性がある……というか、勇者はよくこの気配を感じ取れたな。我には何も感じないが」


「……え? そうなのか?」


「そうじゃな。わらわにも分からんのう……これは恐らくはニンジャ……しかも『上忍』に分類される手練れじゃろう」


 二人はこの気配が分からないらしい。

 感知の力が強い俺のみが把握していたということか。


 なら、ここを見張っている相手はかなりの実力者と見ていいだろう。

 一瞬で倒すことはできないだろうし、戦闘中に仲間でも呼ばれたら旅行どころじゃなくなる。


「では、わらわに任せるのじゃ」


 ここでタマモが前に出た。

 狐の耳をぴくぴくと動かしながら、九本ある尻尾を揺らしている。


 それから、歌うように言葉を紡いだ。


「【だるまさんがころんだ】」


 そう言って、一つ柏手を打つ。

 瞬間――場の空気が変わった。


「……久しぶりに見たな。確か【妖術】だっけ?」


 四天王の一人、妖狐のタマモは【妖術】と呼ばれる奇怪な術を用いて相手をかく乱する。

 魔王軍の中でも、敵に回したら厄介なタイプの筆頭である。


 ユメノが誘惑に長けているとするなら、タマモは幻惑に長けていると言えるだろう。


「【だーるーまーさーんーがー】……」


 今度は先程よりも言葉を間延びさせながら、タマモはゆっくりと外に出て行く。


「ん? もう良いみたいだな。勇者よ、行くぞ」


 俺と魔王も後ろからついて行った。


 世界店から出て、周囲を見渡してみる。

 ここは森の中だった。隠れたり迎撃がしやすいよう、地形は工夫されているはずだ。


 だが、タマモの【妖術】のおかげで俺たちに襲いかかってくる者はいない。

 俺が感知している気配も、微動だにしなかった。


 それから少し歩いて、相手が認識できる範囲から逃れたところまで離れる。

 ここまで来てようやく、タマモは術を解いた。


「【こーろーんーだー】……ふぅ、これで大丈夫じゃな」


 もう一度、彼女は柏手を打つ。

 それでようやく、場を圧迫していた異様な空気がなくなった。


「……今のは?」


「【だるまさんがころんだ】じゃ。この十音を言い終わらない間、鬼は誰も認識できなくなる。鬼というのは、今回でいうところのニンジャたちじゃな。強引に鬼を押し付けてやったのじゃ」


 本来なら、この【だるまさんがころんだ】というのは、鬼となる存在が口にするべき言葉らしい。だが、タマモは妖術で相手の認識を阻害し、鬼という役割を押し付けることができるのだ。


 なんとも面妖な術である……あと、俺はよくこんな奴と戦えてたよな。

 もう二度と、こいつらなんて相手にしたくない。


「御苦労だ、タマモ。これで我と勇者は、旅行を楽しめるっ」


「これ、あまりはしゃいだらダメじゃ。変装はしておるが、お主らの外見は目立つのじゃぞ? 大人しくするのじゃ」


 何はともあれ、ホドへの潜入には成功した。

 これから少し遊んで、その後に魔界で捕まえたニンジャの言っていた『君主』とやらを探せばいいだろう。

いつもお読みくださりありがとうございます!

このたび、新作「お目覚めですか魔王様! ~幼女と始める魔王城建設記~」を投稿致しました。

こっちもメインヒロインは幼女となります。もしよろしければ、こちらもよろしくお願い致します!

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