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第六十七話 ママの日特別企画 ~ママ~

ママの日特別企画です。

勇者と魔王の子供が生まれて、少し経った頃のお話となります。

どうぞよろしくお願いします。

「イラッシャイマセ! 今日ハ母ノ日ダカラ、特別イベント発生中ダヨ!」


 何気なく立ち寄ったセフィロトの世界店にて。

 黒子姿の店主さんからオススメされたカタログを眺めると、そこには『母の日特別イベント!』と書かれていた。


 母の日とはなんだろう?

 詳細を見てみると、どうも母なる人に感謝を告げる日らしい。


 ほう、なるほどな……とりあえずカタログをもらった俺は、早速魔王城へと戻った。


「ドラゴぉおおおおお!! ちょっといいかぁあああああ!?」


 魔王の間と呼ばれる、魔王が仕事をする部屋に俺は飛びこむ。

 中では、仕事中の魔王――ドラゴがいた。


 奴は俺を強くにらんでいる。


「うるさいぞ、勇者。オレは仕事中だ!」


「そんなことより」


「『そんなこと』と言うな! 魔界を管理するという大事な仕事だ!!」


「えー、魔界なんて何もしなくても大丈夫だろ。みんなしぶといし、勝手に生きるよ」


「黙れ……はぁ。何をしに来たのだ? 代行とはいえ、オレは現在魔王という立場にあるのだ。もう少し、礼儀正しくできないのか?」


「そんなことより」


「喧嘩売ってるのか? いつでも相手になるぞ、寄生虫が!!」


 怒るドラゴを無視して、俺は奴に歩み寄る。


 新しく魔王になったからって調子に乗っているが、俺にとってドラゴはドラゴである。あまり威厳も感じないし、態度を改めるつもりもなかった。


「これ、読め」


「……『母の日』だと? それがどうした?」


「ママに感謝を伝える日なんだって」


「……何が言いたい?」


「だから、俺……せっかくだし、魔王に感謝を伝えたいなって思ったんだよ」


 そう言った直後、ドラゴは不意に俺の右頬を殴った。


「痛っ!? 何するんだよ!!」


「勇者……いいか? 魔王様は、お前の『母』ではない」


「そうだな。あいつは俺の『ママ』だよな」


 今度は左頬を殴られた。


「正気に戻れ。魔王様はお前にとって、妻であり嫁だ。母でもママでもない」


 ちなみにこいつは現在、俺の嫁である幼女で可愛くて愛らしい魔王に代わって魔王をしているのだが、自分を魔王とは思ってないようである。『オレは代行だ。魔王様の子供が成長したらすぐに魔王の座を受け渡す』と言って聞かないめんどくさい奴である。


 なので、俺の嫁もまだ魔王呼びしているというわけだ。厳密にいえば俺もとっくに勇者は引退しているんだけどな。名前なんて捨てたので、呼び方はそのままだ。


「でも! 俺、たまに魔王とママプレイするし、ママって言うのも間違ってねぇよ!!」


「そ、そんなドン引きするようなことを暴露するな……あー、もう分かった! で、その話をオレにした意味は!? こっちも忙しいのだ、さっさとしろ!」 


 察しと理解の悪いドラゴ。

 俺はやれやれと肩をすくめてしまった。


 仕方ない、分かりやすく説明してやろうかな。


「ほら、このイベントって、討伐系じゃん?」


「ああ。第零世界『ダァト』の……【グリフォン】が討伐対象か。五帝でも討伐できない、難儀な魔物らしいな」


「うん。俺一人じゃ勝てない相手ってことだ」


 つまり。


「手伝って!」


「断る!」


 その瞬間、俺はドラゴの頬を殴った。


「いいから来いよ! じゃないと、今度お前の娘をニト教の集会に連れて行くからな!?」


「や、やめろっ。あの宗教だけはやめてくれ!! 娘の教育に悪いっ」


「俺はお前の娘と仲良しだからなっ。俺の娘と一緒に、毎日連れて行ってやるからな!!」


「分かった! だから、あの宗教だけは、どうか……っ!」


 よし、交渉成立だった。

 ドラゴも快く手伝ってくれるようなので、俺たちは早速ダァトに赴く。


 グリフォンはあまり時間をかけずに見つけることができた。


「ドラゴ! 攻撃と防御は任せたぞ!!」


「だったらお前は何をやるんだ!?」


「応援」


「ふざけるなよ、ゴミクズがぁあああああああああ!」


 そんなこんなでドラゴを囮にしつつ、たまに俺も囮にされつつ、最終的にはお互いを巻き添えにしながらもグリフォンの討伐を成功させる。


 母の日特別イベントを達成して、手に入れたのは【愛のネックレス】というアイテムだった。

 ハート形の可愛い装飾品である。参加者全員に報酬は出るようで、二つ手に入れた。一つはドラゴに渡して、俺は自分の家へと帰る。


 魔王は娘のお守をしていた。

 俺も仲良く手伝って、無事娘を寝かしつけることに成功。


「ふぅ……我が娘ながら、やっぱり勇者のことが大好きなようだな。勇者がいない時、あやすのが大変だ。あまり家は空けないでくれると、我も娘も嬉しいぞ?」


 可愛いことを言ってくれる魔王に頬を緩めながら、俺はイベント達成によって手に入れたネックレスを取り出す。


「ごめんな。今日はこれを手に入れるために外出してたんだ。受け取ってくれるか?」


 ハート形のネックレスを、魔王に見せた。

 彼女は最初、これが何か分からないようにポカンとしていた。


「……こ、これは?」


「だから、プレゼント。今日はよく分からないけど『ママの日』なんだって。魔王にはいつもママプレイでお世話になってるし、いつもママとして家事とか子供のお世話とか俺のお世話とか頑張ってるから、感謝の気持ちだな」


 いつもありがとう。

 その思いを込めたプレゼントに、魔王は――


「…………ぁ」


 一粒、涙を零した。

 これが悲しみの涙じゃないことくらい、今まで長い間一緒に過ごしているので、しっかりと理解している。


 魔王は、嬉しくて泣いているのだ。


「ず、ずるいではないかっ。そんなドッキリされては、びっくりするだろうっ」


 ゴシゴシと目をこすりながらも、嬉しそうに破顔する魔王。

 そんな彼女に、ネックレスをつけてあげた。


「うん、やっぱりいい。最初に見た時から、お前に似合うと思ってたんだよ。可愛いぞ、魔王?」 


「か、可愛いとか言うにゃぁ……」


 照れながらも、彼女はネックレスを嬉しそうに握りしめていた。


 感謝の気持ち、しっかりと伝わってくれたようである。


「じゃあ、そろそろ……ママぁ」


「あ、こらっ。いきなり甘えるなっ」


 とかなんとか言いつつも、魔王は俺を甘やかしてくれる。


 そろそろ二人目を作っても良い頃だし、俺も本気を出すかな!


 こうして、勇者と魔王の幸せな時間が流れていく。

 幸福の中で、俺たちは優しいひと時を過ごすのであった――


【ママの日特別企画 ~ママ~、終わり】

お読みくださりありがとうございます!

次より、第三章の始まりです。

どうぞよろしくお願いします。 

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