↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者だけど、魔王から世界を半分もらって裏切ることにした  作者: 八神鏡@ようあま2巻&霜月さんはモブが好き1~5巻
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/143

第六十一話 勇者と魔王

 お風呂から上がって、俺と魔王はそのままベッドで対面する。

 服なんて着なかった。お互いに裸のままである。


「…………勇者。本当に、大丈夫なのか?」


 魔王はこちらの様子を案じている。

 もちろん、今の状態ではダメだ。ユメノの魔法のせいでそういう気分にはなれない。


「ああ! すまない、気が利かなくて……すぐに『浄化のアミュレット』を持ってこさせよう」


 第四世界『ケセド』から持ち帰った、魔法を無効化するアイテム『浄化のアミュレット』。これを使えば、ユメノによる強力な魔法も無効化することができるだろう。


 だが、そんな効果の強いアイテムが、何の代償もなく使用できるわけもなく。


「あのさ……『浄化のアミュレット』は、使うと寿命が減るらしいんだ」


 そう。このアイテム、使用と同時に寿命が減るらしいのである。実物を見たタマモがそのことを思い出したようで、事前に忠告してくれたのだ。


 つまり『浄化のアミュレット』というアイテムは、寿命という概念のない死霊族アンデッドだからこそ無制限に使えるが、他の種族では使用するとリスクが大きいということだ。


「なに? だったら、使うな。我と勇者が一緒に居られる時間が減るのは困る」


 俺の説明を聞いて、魔王は即座に使用を断念した。

 本当は、『浄化のアミュレット』を使ってでもいいから、エッチなことをしたいくせに。


「残念だが、しょうがないことだ」


 相変わらず俺のためを一番に思ってくれる奴である。

 俺の害になることであれば、自分が損をすることもいとわない。


 そういうところが、魔王のいいところだ。

 でも、そうやって自分の思いを殺すところは、夫婦として悪いことだと思う。


「では、もう眠るか。エッチなことはできないが、構わん。今日は勇者、とても頑張ったからな。ゆっくり休もう」


「……イヤだ」


 そこで俺は、魔王を抱きしめる。

 気を落としてシュンとしている彼女を、見ていられなかったのだ。


「魔王。俺たちは、夫婦だ」


 気を遣い合うような他人同士ではない。

 お互いを幸せにする義務がある関係なのである。


「我慢は、もうやめよう」


 俺も、魔王も……我慢して、自分の意見を言わないのは、もうやめたいと思った。

 それは、幸せにならない選択なのだから。


「言いたいことは、はっきり言い合おう。お前のわがままも、聞かせてくれ……俺も、わがままをたくさん言うようにする。それでお互いに、幸せになろう」


 胸の中の彼女へ、囁きかける。

 直に触れる肌はとても熱かった。


「…………いいのか? 我のわがまま、言ってもいいのか?」


「もちろん。俺たちは、夫婦だからな」


 頷く。彼女が幸せになるために、夫として彼女の思いを受け入れることを誓う。


 そうすれば彼女は、小さな声で……こんなことを、言うのだった。


「勇者の全てを、我にぶつけてほしい……」


 濡れた瞳が、俺を見上げる。

 形の良い唇が、震えがちに言葉を紡ぐ。


「心だけじゃなくて、体の繋がりもほしい……」


 ここまでは、魔王も今まで何度も口にしていたお願いである。

 そしてここからが、魔王の『わがまま』だった。


「だから――ユメノの魔法を、どうにかしろっ」


 彼女は俺の首元に手をまわして、逆に抱き着いてきた。

 耳元で、熱い吐息と一緒に言葉が吐き出される。



「何でもいいから、とにかく我とエッチなことをしろ!」



 可愛い可愛い、嫁の願いだ。

 叶えなければ、男じゃない。


「――任せろ」


 言って、俺はぐっと奥歯を噛みしめた。


 俺を未だに縛っている、ユメノの【魅了チャーム】に、強く抗うことにしたのだ。


 精神に意識を集中させると、やがて感じたのはユメノによる精神の支配。俺の心に絡みついた『何か』である。


 流石は、性交を禁じられて体を持て余しているサキュバスだ。強い魔法である。

 そう簡単には精神支配を解けそうにない。俺の心にいやらしく絡みついている。


 でも、魔王のためだ。

 あの淫乱ロリ巨乳の魔法だろうと、関係ない。


「っ!!」


 今までの全てをユメノの魔法にぶつけた。

 自慢じゃないが、元勇者である俺の精神力は凄まじいものである。今までは、魔王に対する遠慮や臆病があって本領を発揮できずに、されるがままだったのだが……今はもう、迷いがない。


 己の十全を、発揮することができる!


「ぬぁあああああああああああ!!」


 叫ぶ。未だべったりと張り付くユメノの魔法を、強引に引き剥がす。


「淫乱サキュバスがっ……俺と魔王の、邪魔をするなぁあああああ!!」


 全身に力を込めて、踏ん張った。自然、抱きしめている魔王も苦しくなっているだろうが、彼女は声一つ上げずに俺を待っている。


 その思いに、応えたい。


「魔王と、エロいことを……させろぉおおおおおお!!」


 愛する魔王のために。

 全力を振り絞った結果――ユメノのいやらしい魔法が、音を立てて砕けた。


 抵抗反発レジストが、成功したのである。


「やった!」


 俺が魔法を解いたのを知覚したのか、魔王が嬌声を上げた。

 どうにか彼女の思いに応えることができたようだ……良かった。


「はぁ、はぁ……」


「おっと」


 ユメノの魔法をレジストした反動で、途端に体から力が抜ける。

 魔王の方に倒れこんでしまって、そのまま彼女と一緒に寝転がることになった。


「……よくやったな、勇者。偉いぞ」


 俺の頑張りを認めて、魔王はよしよしと頭を撫でてくれる。

 こういうところが、好きだ。努力をきちんと見てくれて、すかさず褒めてくれる思いやりのあるところに、惚れたのだ。


「うん。俺、頑張った」


「我のために……ありがとうな。その、嬉しかったぞっ」


 魔王はニッコリと笑ってくれる。

 それから、間をおかずに――俺に飛びついてくるのだった。


「が、我慢できないっ。勇者が、素敵すぎるから」


 俺に馬乗りになって、彼女はそのまま唇を重ねてくる。

 いつもよりねっとりとした接吻だった。


「――もう、いいだろう?」


 完璧にメスの顔になっている魔王が、発情したように舌なめずりをしている。


 ここでされるがままになっては、夫として恥ずかしいな。


「ああ、かかってこい……俺の本気を、見せてやる!」


 もう、俺と魔王を阻むものはなかった。

 ユメノの魔法も、心のすれちがいも、何もない。


「勇者と魔王の、夜の決戦だな……全力で行くぞ、勇者」


「返り討ちにしてやるよ、魔王」


 お互いに笑いあい、健闘を誓いあう。

 こうして俺たちは、本当の意味でようやく夫婦となったのだ――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。