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第四十六話 ロリコンは性癖ではない。魂に刻まれた業である。

 火照る体。荒れる息。とどめなく溢れる欲望に、俺は魔王を強く抱きしめる。

 いよいよもって、限界に近かった。


「よしよし……勇者よ。我のために頑張ってくれたのだな。偉いぞっ」


 そんな俺を、魔王は撫でてくれる。

 ベッドの上で、俺は魔王の胸に顔を埋めていた。彼女の甘い匂いをいっぱいに吸い込み、その柔らかい肌を顔全部で感じ取り、魔王の鼓動に身を任せていた。


 やっぱり、魔王の胸は落ち着く。

 安らかになれるというか……俺の全部を癒してくれるのである。


「我は知っているぞ。勇者の努力を……知っているのだ。我を愛するために、一生懸命なところを、しっかり見ているからな」


 魔王は俺を肯定する。

 無条件に、ただ俺のやっていることを、彼女は優しく受け止めてくれる。


「本当は、頑張らなくてもいいと言いたいところだがな……これは、勇者のためでもあるのだ。貴様が己に蓋をしてしまっては、快楽を与えることもできない。殻を破れ。貴様はそろそろ、欲望に忠実になれ」


 俺の弱さを、魔王は知っている。

 俺の本質が、勇者の皮をかぶった臆病者であることを、彼女は理解してくれている。


 彼女との関係を一歩進めるのが怖かった。

 もしも彼女の期待に応えられなかったら――そんな不安がなかったといえば、嘘になる。


 だからユメノの魔法は、俺にとって都合の良いもので……甘えてしまった。


 でも、それは間違いだった。そのせいで魔王を苦しめることになったのだ。

 このぬるま湯に浸かっていてはいけないと、俺は性欲向上の旅を決意したのだ。


 そうして今、俺はムラムラした状態で魔王と一緒に寝ている。


「素直になれ。我を好きにしていい……安心しろ。我は、何をされても受け入れるし、どんなことがあっても勇者のことが大好きだからな」


 俺をあやすように抱きしめながら、彼女は囁いてくれるのだ。


「魔王……っ」


 褐色の肌が愛おしかった。

 その細い腰をわしづかみにして、自分の欲望をぶつけたくなる。


 俺の体も熱いが、しかしそれ以上に魔王の体も熱くて。

 いったい、もっと近づいたらどれだけの熱を感じ取れるのだろうと、欲求が溢れて止まらなくなる。


「よしよし、怖くない怖くない。楽にしていいのだ……ただ、勇者の欲望のままにしてくれたらいい。それだけなのだ。簡単だろう? 大丈夫、勇者ならできる」


 魔王は俺を急かさない。

 大丈夫だと安心させて、そっと背中を押してくれるような。


 深い愛情を感じた。

 魔王の思いに、俺の胸もまた大きく鼓動する。


 愛しい。

 この小さな幼女然とした魔王が、この上なく愛くるしい。


「さぁ、ゆっくりでいいから……勇者の好きに、してくれ」


 そっと、頬にキスをされる。

 加えて、甘えるように耳たぶを噛まれる。


 彼女の吐息が頬を濡らした。

 しっとりとした息に、身体が熱くなるのを止められない。


 こんなにも魅力的な魔王が、俺を求めてくれているのだ。

 これ以上に嬉しいことはない。俺はただ、欲望のままに。


 魔王を、襲う!


「――――っ!!」


 意を決して彼女に覆いかぶさった。

 細い肩を抑えつけて、彼女の身動きを封じる。


 手のひらで簡単に握り隠せる彼女の肩は、とても小さくて細かった。

 ともすれば、少し力を入れると壊れそうなほど繊細に感じてしまう。


「嬉しいぞ……勇者よ。我の全部、もらってくれ」


 俺に身を任せる魔王の言葉は、やっぱり可愛らしいものだった。

 愛しい。この小さな魔王を、今日これ以上に愛したいと思った日はない。


 だから、俺は彼女を襲う……襲わないと、いけない。

 魔王の思いを裏切りたくない。その一心で、俺は魔王の全てを奪おうとした。




「――やめだ」




 だが、そんな俺を止めたのは……こともあろうに、魔王だった。


「焚きつけても、やはりダメか。そのような苦しそうな顔をされると、どうにも興が乗らん」


 俺の頬に手を当てて、彼女は寂し気な顔で笑っていた。


「……俺、は」


 言われて、気付く。

 俺が無理をしていたことに、俺より早く魔王は気付いていたのだ。


 今の俺は重度のロリコンだ。

 愛しい彼女を、穢したくなかった。このまま、清廉なままでいてくれという思いが強くあった。


 そのせいで、またしても……俺は魔王と最後まで致すことが出来なかったのである。


「準備は整っているようだがな。やれやれ、勇者も難儀な性格をしているな……そんなにも我が大切なのか? 愛しいのか? ここまで深く思われては、ちょっと照れる」


 軽く、唇にキスをされた。

 はにかむ彼女に、胸が締め付けられる。


「我としては、勇者は勇者の幸せをもっと考えて欲しい。我のことなど気にせず、欲望に従ってくれると良かったが……仕方ない奴だ。そういうところを好きになってしまった我の負けだ」


 ここに至って、魔王は無理をしないでいいと言ってくれた。

 俺のために、過剰な努力は不要だと断じてくれた。


 また悪い癖がでたようだ……俺はいつも、壊れるまで頑張ってしまう。

 今、仮に魔王を襲ってしまったなら、罪悪感に苦しめられたことだろう。そのあたりを察してくれた魔王には、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


「ごめんな……本当は、襲いたいんだ。お前みたいなエロの塊を前に、我慢なんてしたくないんだ」


「さ、流石にエロの塊ではないぞっ。我は勇者に対してのみエロい自覚はあるが、そこまでじゃないからな!」


「くっそ……孕ませたい! お前の全てを奪いたいっ。魔王をママにしてやりたい!!」


 でも、今は無理そうだ。

 どうせ、お互いに初めてなのだ……できるなら、一生記憶に残るような激しいやつがいい。


 今みたいに、後ろめたさがある状態じゃない時が、俺としては良かった。


 残念だけど、魔王の優しさにまた甘えよう。


「もう少しだけ、我慢してくれないか? 俺、ちゃんと振り切るから……魔王を絶対に孕ませるマンになるから」


「…………むぅ。そうだな。強引な勇者って、なんかすごいそそられるな。我はな、勇者にならめちゃくちゃにされたいんだぞ?」


「ああ。俺も、めちゃくちゃにしたい」


 お互いに顔を見合わせて、小さく笑いあう。

 愛しい彼女との行為は、また延期となった。


 エルフの世界にて、魔王とエロいことをするために『エルフ式性欲促進マッサージ儀式』を受けたわけだが、結果はダメだった。


 性欲は向上してもなお、ユメノにかけられたロリコンの魔法のせいで精神的に不能となっていたのだ。


 魔王にまた我慢させてしまった……

 少しでも早く、彼女の期待に応えたい。


 だからまた、俺は自分のロリコンを改善することを改めて決意するのだった――

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