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第三十九話 新婚旅行兼不全治療の旅

 魔王軍緊急会議はなおも続く。


「勇者は現在、ユメノの魔法で不全中だ」


「……面目ない」


「うぅ。わ、私のせいじゃないですっ。魔王様が、私に性交の許可をくれないからです!」


 改めて現状を口にされると、申し訳ない気分になってしまった。


「勇者のせいではない。ユメノよ、貴様の魔法で勇者は不全になっている。これは事実だ」


 しどろもどろになるユメノを魔王は睨む。


「だからといって、別にその罪を問うつもりはないから安心しろ。我も悪ふざけが過ぎたことは認める。まぁ、貴様に性交の許可は出さないが」


「……覚えていてくださいよ? 私、魔王様の初めての時に、絶対邪魔してやりますから!!」


「やれるものならやってみろ。楽しみにしている……で、この魔法が解けるのはいつだ?」


 魔王の問いかけに、悔し涙を流すユメノはぷいっとそっぽを向く。


「例の通り、誰かさんのせいで性欲が溜まりまくってるので、私の力は過去最強になってます。しばらく解けません。恐らく年単位ですね」


「……くっ。年単位もなしとなれば、我の方が狂いそうだ」


「ざまぁ、です。私と同じように悶々とすればいいんです!」


「仕方ないか……貴様には毎夜、勇者に性欲を高める魔法をかけてもらう。それで少しは相殺されることを祈ろう」


 おっと。俺の意思は関係ないようだ。

 まぁ、いいか。俺としても、機能するようになれば文句ないし。


 何より、魔王が俺のために頭を悩まされているのである。夫として、しっかりと向き合わなければ。


「ふむ、他にも出来ることはやっておこう……タマモよ。貴様も何か、勇者を回復できるような技を持ってないか?」


 今度は四天王が一人、妖狐のタマモに魔王は視線を向けた。

 今まで黙っていたタマモは、キセルの煙を吹きながら小さく笑う。


「そうじゃな。わらわの妖術にそのようなものはないのう……ただ、房中術になら多少心得がある。これは勇者の回復につながるかや?」


「無論だ。その技を我に伝授しろ」


 房中術……確かエロイ技だよな? 本当に役に立つのだろうか。

 分からんが、ともあれ会議は進む。


「別の切り口から考えてみるか。もともとはユメノの魔法が原因だ……魔法無効化などのアイテムや術が使える者に心当たりがある者は居るか?」


「無効化、であれば吾輩の元いた世界にそういうアイテムがありましたな」


 続いて声を上げたのは、スケルトンのスケさんである。

 こいつは今でこそ魔王軍の一人だが、昔は別の世界に居たと聞いたことがある。


 確か、第四世界『ケセド』だったはず。死霊系統の種族が支配する世界に、魔法無効化系統のアイテムがあるようだ。


「……大丈夫か? あの世界の者に関しては、魔族にとって天敵だ。貴様一人で行くことになるが」


 魔王は少し難しそうな顔になる。

 魔族とケセドを支配する種族――死霊族は、実はかなり相性が悪い。


 スケルトンやゾンビなどの死霊族は攻撃力こそ弱いが不死という特性がある。光や炎系統の属性を持つ者が少ない魔族は、彼らを退けられる人員が限定されるのだ。


 魔王はそのあたりを見て、基本的に死霊族とは不干渉を貫いている。行くならスケさん一人で行って欲しいと、言外にそう言っていた。


「我としては、危険だから行ってほしくないが」


「魔王様はお優しいですね。だが、ご安心あれ。吾輩は元ケセドの一員ですぞ? むしろ一人の方が、動きやすいですな」


 ただ、スケさんは魔族とは違う上に、屈指の実力者だ。


「そうか……頼んでも良いか?」


「お任せを」


 魔王もそのあたりを信頼して、スケさんをケセドに派遣することを決定したようだ。


 ってか、想像以上に事態が大きくなっている……


「五帝よ。貴様らは、精力のつく魔物をたくさん捕獲しておけ。勇者に食べさせたい」


「「「「「了解!」」」」」


 第零世界『ダアト』で、五帝の面々に食料の確保を魔王は指示する。


「六魔侯爵よ、貴様らは何かないか?」


「ん~、何も思いつかないけど考えておきます! ボクは頭悪いから分かんないけど、タナカさんは頭いいのできっと凄い案を思いつきます!!」


「こ、こらっ。シロ殿、私のハードルを上げるのはちょっと……」


「そうか。では、機を見て人間界の方に顔を出そう。その時までに、何か考えておけ。課題としておく」


 六魔侯爵の面々も巻き込んだ後、残る七大罪には魔王代行となるドラゴのサポートを指示した。


 俺の不全治療のために、魔族は最大限の布陣を組んだらしい。

 ……面目ないというか、ここまでやる? と思ってしまうくらい、徹底されていた。


「よし、それでは今より……エルフの世界『イェソド』へと行く! 一緒に行く者はユメノ、タマモ、あとはミナを連れて行くとしよう」


「え、なんで? エルフの世界に何か用事でもあるのか?」


「あの者達は魔法のエキスパートであろう? 勇者にかかった魔法を無効化できるのでは、と思ってな」


 なるほど。確かに、魔法という点においてエルフより優れた種族はいない。


「それに、エルフのセフィラ――アトレと約束をしたからな。顔を出しておこうかと」


 あー、そういえばそんなこと言ってたな。


「どうだ? 勇者よ……面倒だとは思うが、我のムラムラも限界なのだっ。どうか、一緒に行ってくれないか?」


 魔王は不安そうに俺を見る。

 配下の者には命令だったのに、俺にだけ下手に出るのはどことなく不思議な感じだった。


 可愛いというか、俺に気をつかっているというか……そういうの、あまり気にしないでもいいのに。


「分かった。新婚旅行も兼ねてると思えば、面倒でもないよ。むしろ、俺のせいで手を煩わせてごめんな」


「そ、そんなことはにゃいっ! 勇者よ、我のためにありがとう」


 魔王は照れたように頬を緩める。

 彼女のためにも、やっぱり今の状態は良くないと思った。


「よし、それでは早速出発だ!」


 さてさて、これよりエルフの世界『イェソド』へと赴く。

 新婚旅行兼、不全治療の旅が始まるのだった――

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