第三十七話 バレンタイン企画 魔王ちゃんはチョコレート色
バレンタイン特別企画です!
ちょっと早いですが、タイミング良く間話なので連載したいと思います。
どうぞよろしくお願いします!
今回は、魔王と勇者が結婚して十年くらい経った後のお話です。
「イラッシャイマセ」
セフィロトの世界店に入ると、顔を黒い布で隠した怪しい店員が出迎えてくれた。
「何ヲ買イマスカ?」
少しおかしなイントネーションで、店員はカタログを差し出してくる。
それを受け取って、俺はとある商品を探していた。
「……ないな」
全てのページに目を通して、俺はガックリとうなだれる。
「魔王のおっぱいが出るようになるアイテムが、ない!」
そう。俺が探していたのは、女性の母乳が出るようになるアイテムだった。
なんというか、魔王のおっぱいが飲みたかったのである。
「魔王っ。ないんだけど、どうしよう?」
どうしてもおっぱいが飲みたかったので、なかなかショックだった。
落ち込んだまま、俺は魔王の顔を見上げる。
「よしよし、そう暗い顔をするな……我がなんとかしてやろう」
魔王は俺をあやすように、背中をポンポンと叩く。
ちなみに今、俺は魔王に抱っこされている状態である。十年前くらいはきちんと自分の足で立っていた記憶があるのだが、最近は外出する際はほとんど魔王の腕の中だ。
成人男性が幼女に抱かれている構図に、周囲がドン引きすることも多々あるが……まぁ、愛の前には些細なことである。
「おっぱい! おっぱいが、飲みたいっ」
駄々をこねるように声を上げれば、魔王は店員に向かって殺気を放った。
「ということで、出せ。我を怒らせるなよ……? 勇者に、おっぱいを飲ませたいのだっ! とにかく、出せ」
「申シ訳アリマセン。ウチニハ無イデス」
「くっ……どうして我はおっぱいが出ないのだ。妊娠でもすれば出るのだろうか……」
「妊娠、そろそろしてもおかしくないはずなんだけどな。こればっかりはどうしようもないか」
「このままイチャイチャするのも嫌いではないが、やっぱり勇者におっぱいを飲ませてあげたいなぁ」
二人して、バカ丸出しの会話を交わす。
他人が聞いてたら絶対にドン引きしていただろうが、世界店の店員は感情がないみたいなので無反応であった。
「はぁ……おっぱいが出ないなら、せめて魔王を美味しく食べられるアイテムとかない?」
「こ、こらっ。そんなに我を食べたいのか? い、いつでも、大歓迎だからな?」
魔王が照れて顔を赤くする中、世界店の店員がカタログをこちらに突き出してくる。
「今、『バレンタインフェア』ヤッテマス。チョコレート、安イヨ」
「チョコレート? お菓子……?」
「塗ル用ノチョコレート、アルヨ」
「っ!?」
店員に勧められて、俺は閃く。
そうだ、魔王にチョコレート塗ったら、美味しく食べられるじゃないか!
もちろん、物理的にもだが……性的な意味でもある。
今夜はこういう趣向でいいか。
「じゃあ、チョコレートたくさんくれ」
「毎度アリ! 銀貨一枚分クライデ良イ?」
「うむ。我が支払おう」
当たり前のように魔王に支払ってもらってから、俺たちは買い物を終えた。
今の俺は専業ヒモである。魔王に寄生して生きてるゴミクズなのだが、幸せなので問題なし。
「くくっ。勇者もいよいよ、我無しでは生きていけない体になってしまったか」
「まったくだよ。お前が死んだら俺も死ぬからな? 絶対死ぬなよ?」
「まだ勇者とイチャイチャしたいから、当分死なないであろうな。あと千年くらい?」
「悪くない千年になりそうだな」
魔王も喜んでいるようなので、俺たちはウィンウィンな関係なのだ。
うん、だからこれからも一生ヒモでいるね! 魔王、愛してる!
「魔王、なんかムラムラしてきた」
「勇者よ。貴様、一線を越えてから毎夜のように求めてくるな……性欲旺盛ではないか」
「俺より淫乱なくせに何言ってんの? 俺が元勇者じゃなかったら、お前の性欲になんて付き合えてなかったぞ? 夜、激しすぎだろ」
「勇者も、我に負けず劣らずだと思うのだが」
「じゃあ、今夜どっちが性欲旺盛か勝負するか? 俺、絶対に負けるから」
「……ふむ。勝っても負けても、まぁ我的にはどっちでも良いのだがな。どうせ勇者は最後まで付き合ってくれるし。なんと可愛い奴かっ」
抱っこされたまま、頭をなでなでされてしまう。ぁ~、ダメになりそう。いや、もうダメになってるか。
「その前に、栄養補給はしておくかっ。勇者よ、チョコレートでも食べよう」
魔王の部屋にて、早速さっき買ったチョコレートを食べることに。
俺が腰を下ろすと同時に、魔王がチョコレートを口元に持ってきてくれた。
「ほれ、あーん」
「あーん」
当たり前のように食べさせてもらう。魔王の指ごと舐めて……うん、甘いな。美味しい。
「魔王も食べたら?」
「……勇者の味がするな」
「それ、俺が舐めた指だから。チョコレート食べろよ」
もう一口、魔王に食べさせてもらう。
美味しいけど……あれだな。噛むのが面倒くさい。
最近、息するのも難儀に感じてきた頃合い。咀嚼という行為が億劫だった。
「魔王、俺の代わりに噛んでくれ」
「任せろっ」
頼んでみると、魔王が快くチョコレートを口に含む。
そのままかみ砕いた後、当たり前のように俺にキスをしてきた。
口づけしたまま、彼女が俺の口内にチョコレートを流し込んでくる。
だが、それだけでは終わらず……お互いの舌も食べそうになっていた。
「……もう栄養補給終わっていい?」
「我も、我慢できんな」
魔王がエロい顔で笑う。俺もたまらなくなって、彼女を抱きしめる。
幸せだった。
バカップル丸出しだけど、こんなくだらないことをできている今が……最高に、幸せだった。
「魔王は、甘いな」
口内に残るチョコレートと、彼女の匂いが絡み合って……脳みそがおかしくなりそうである。
「……どうせだから、勇者のためにもっと甘くしてやろう」
次いで彼女は、服を脱いで体にチョコレートを塗りたくる。
もともと肌が褐色なので、チョコレートを塗っていてもあまり区別がつかなかった。
なので、いっそのこと魔王ごと食べることに。
「うひゃぁ……こらっ。勇者よ、そこにはチョコレート塗ってないぞっ」
「ぐへへへ。ホワイトチョコレートもぶっかけてやろうかっ」
「くっ……勇者の剣に、貫かれてしまう」
「勇者による魔王の討伐だ。悪く思うなよ」
とかなんとか。
俺たちは頭の悪いことを言いながら、日課のスポーツを開始する。
もう、前のように俺たちは争いあってなんかいない。
俺と彼女は、愛し合っている。
幸せな毎日を、過ごしていた。
そして、これからも……俺と魔王は、こんな甘い毎日を過ごすのである。
とろけるように甘い、チョコレートのように――
【バレンタイン特別企画、終わり】
お読みくださりありがとうございます!
次より、二章に入ります。




