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第二十二話 小人族の女性は即ち幼女なのでエロいと思います

 その日の魔王城は、にわかに騒々しかった。


「魔王様! 侵入者が、この世界に――って、あ」


 俺が居候している魔王の部屋に、ロリ巨乳サキュバスが慌てた様子で入ってきた。


 その時俺は魔王に耳掃除をしてもらっていた。


「相変わらず、イチャイチャしてますね」


「……違うんだ。俺は別に、魔王に甘えていたわけじゃなくてっ」


「こら、勇者。動くでない、綺麗にできないだろう」


「あひん。ちょ、そこは弱い……って、違くて!」


「はいはい、分かりましたから」


 ユメノはうんざりしたようにため息を零したが、まあこの程度の場面にはよく遭遇しているので慣れていたのだろう。


「はぁ……とりあえず、報告を」


 すぐに気を取り直して、ユメノはここに来た理由を口にするのだった。


「侵入者です。捕縛しましたので、急いで来てください」


 瞬間、俺と魔王は同時に跳ね起きる。


「すぐ行く」


 魔王はふざけた態度を消して、いつものヒモ下着とマントを身にまとった。表情は真剣そのものである。


 それも無理はない。

 侵入者とは、即ち他世界からの侵略者を意味するのだから。


 魔族の王である彼女には、侵略者から世界を守る義務がある。


「勇者、貴様はどうする? 一緒に行くか?」


「……ああ、俺も行く」


 毅然として歩き出した彼女の後ろを、俺もまたついていくことにした。


 魔界はもう俺にとっての家である。

 魔王との幸せな暮らしを邪魔させないためにも、もし必要とあれば手を貸そうと思っていたのだ。


「準備が出来たなら、行きましょう」


 ユメノの案内で、俺たちは走る。

 到着したのは魔王城の外、丁度入口あたりだった。


 そこに、捕らえたであろう侵入者が寝かされている。


「――なっ」


 捕縛された侵入者を一目見て、俺たちはガックリと肩を落としてしまった。


 侵入者と聞いていたものだから、一体どこの屈強な戦士が単騎で乗り込んでいたのかと身構えていたというのに――


「おみゃえらぁ、わらしをられらとおもってんにゃあ」


 そこにいたのは、大きな酒瓶を抱える一人の酔っ払いであった。

 しかも、その種族は……一目見れば分かる。


 外見は人間に近いが、人間ではあり得ないその小さな身長――【小人族】に他ならないだろう。


 第七世界『ネツァク』に住んでいる種族であった。


 性別は女。魔王やミナよりも一回り小さく、顔立ちもまた幼い。くるくるっとウェーブのかかった髪の毛が印象的である。


 また、彼女が着ている修道服がボロボロなのも気になるな。そもそも彼女は修道女シスターなのか? そうであるなら、どうして禁じられているはずの酒を飲んで酔っ払っている?


 一体何者なのか。


「……あの小人は何しに来たのだ?」

 

 魔王は途端にやる気をなくしたのか、俺の方にもたれかかってくる。


「さぁ? ってか、こんな酔っ払いのために、何で魔王を呼んだんだ?」


 胸に顔をうずめてきたので抱きしめてやりながら、俺はユメノに問いかけた。


 ロリ巨乳の彼女は悩まし気に腕を組んで胸を強調しながら、困ったような表情を浮かべる。


「どう扱っていいか分からなくて、魔王様の判断を仰ごうかと。殺したら殺したで、小人族に恨まれるかもしれませんし……」


 基本的に、他種族が違う世界に入り込んだら敵とみなされる。

 侵入したが最後、捕らえられてよっぽどの理由がない限り排除されるのだ。


 他の世界であれば問答無用で殺されてもおかしくないらしいが、魔界『ケテル』はそのあたり寛容らしい。


「ふむ、別にどうでもいいのではないか? それよりも、我と勇者がイチャイチャしていたというのに、邪魔しおって……そう考えるとむかついてきたな」


 魔王は心底興味なさそうだが、時間を割かれたことに憤りを感じているらしい。


「れめぇ、おひゃのひほふもはへはひぃ」


「何言ってるか分からん。そろそろ正気に戻せ」


 彼女はこの場に待機していた、四天王のドラゴに指示を出す。

 龍人は一つ頷いた後、何のためらいもなく小人族の彼女に向かって火を吹いた。


「あっちぃ!? ちょ、いきなり攻撃とか、蛮族なの!? やめ、やめろぉおお!!」


 流石に命の危険を感じたのか、彼女は酒瓶を放り投げて声を上げる。

 どうやら正気に戻ったようだ。


「名乗れ、小さき者よ」


 熱さに喚く彼女に、しかし魔王は容赦しない。なおもドラゴに火炎を維持するよう指示出しながら、名を聞き出す。


「わ、わたしはニト! 世界を巡って神の教えを伝える、修道女シスターのニトよ!」


 小人族の少女――ニトは喚き散らしながら、自己紹介をしてくれた。


「こら、神に寵愛されしシスターのわたしにこんなことしてただで済むと思ってないわよね!」


「……ドラゴ、やめて良いぞ」


 一応は会話できる状態になったので、魔王はドラゴに炎を止めるよう指示を出す。


 ニトは所々焦げた修道服を乱雑に払いながら、ぶつぶつと何やら祈り始めた。


「このクソ汚い蛮族が、わたしともあろうお方に何をしてくれるわけっ! 神よ、この罪深きウンコどもに天罰を与え給え!」


 神に仕えているというのに口が悪い奴だった。酷いな……元仲間だった僧侶でも、神に対してここまで失礼な態度とらなかったぞ?


「……それで、貴様は何をしに来たのだ? わざわざ我に喧嘩を売りに、この魔界に来たというわけではあるまい」


 魔王はめんどくさそうにではあるが、一応は王としてニトに弁解の機会を与えようとしている。


 あんな失礼なことを言われて癇癪を起こさず、冷静に対応するところもまた魔王の魅力の一つだ。


「え~? 幼女のくせに偉そうなんですけど? このわたしを誰だと思ってるの? あの神様に使える、慈悲深きシスターさんですよ? 頭が高いと思わないわけ?」


 それでも彼女は生意気だった。

 せっかく魔王が寛大な態度をとったというのに、何を言っているのか。


「……わ、我の問いに応えよ」


 いいかげん、魔王もイライラしているのか。


 俺の体をスリスリと触ってきている。ストレス発散のつもりなのだろう。今は何も言わずにされるがままになってやった。


 流石に、この頭のおかしい小人族と会話するのは、たいへんそうである。


「ふぅ。これだから蛮族は、礼儀っていうものを知らないわね。仕方ないわ、これも神に仕える愛の深いシスターの役目といったところね。教えてあげるわ! 光栄に思いなさい」


 立場を弁えない小人族は、何故か偉そうな態度でここに来た理由を口にする。


「お金をもらいにきたの! 神のおかげで生きていられるくせに、寄付金の一つも寄越さない蛮族どもから、徴収に来たのよ! さあ、払いなさい。わたしが神の代わりに受け取っておくわ!」


 …………よし、これはもう決定だな。


「殺せ」


 魔王の即断に、控えていた魔族が一斉に動く。

 ニトを抑えつけ、身動きを封じ、その首に刃物を触れさせるのだった。


「なんで!? ちょ、離せっ。セクハラ! こら、今わたしのおっぱい触っただろそこのトカゲ! お金払いなさいよっ!!」


 それでも暴れるニトには、呆れてものも言えないな。

 一体こいつは何なのだろう?


 よく分からない奴だった。


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