後日談その2 不治の病『大好き大好き病』にかかっている魔王ちゃん
とある日、俺が椅子に座って本を読んでいると、膝の上に魔王が座ってきた。
「ゆうしゃぁ~。今、何をしているのだっ?」
甘えるような猫なで声で、彼女は体をこすりつけてくる。
今日も相変わらずいい匂いがした。魔王特有の柔らかい感触に、俺は頬を緩める。
俺のお嫁さんは今日も可愛いなぁ。
「本を読んでいるんだ」
「そっかぁ~。じゃあ、我も一緒に読むぞっ」
そう言って、彼女は俺が読んでいる本を覗き込んでくる。しかしその意識は俺に向いているのが筒抜けで、彼女はしきりに俺にぺたぺたと触ってきた。
「勇者を触っていると、幸せ過ぎて死ぬかもしれん」
そのほっぺたはだらしなく緩んでいる。幸せ過ぎて死にそう、という言葉は本当なのだろう……さっきから、彼女の肌越しに伝わる心臓の鼓動が、とても激しいのだ。
出会ってから長いが、今でも触れるだけでこんなにドキドキしてくれるなんて、魔王は本当に可愛い。
「死んだらダメだぞ。俺が寂しいからな」
「でも、我は病気なのでなっ。不治の病に侵されているから、いつ死んでもおかしくないのだぞ?」
「病気? 初耳だけど……し、死んだり、しないよな?」
なんかそう言われたら不安になってきた!
俺、もう魔王抜きでは生きていけないぞ? もう一人で食事もできないし、外を出歩くこともできない体になっていた。魔王に甘やかされまくった結果、とんでもないクズ人間に進化してしまったのである。
魔王は既に、俺の肉体の一部である。彼女がいなくなったら、俺まで死んじゃう――だから、病気と言われて怖かったのだが。
「でも大丈夫! 我は『勇者のことが大好き大好き病』にかかっているのだっ。勇者が死んだら我も死ぬし、勇者が生きてたら我も生きるっ。だから、安心して良いぞ?」
魔王がかかっていたのは、めちゃくちゃ可愛い病気だった。
それならまぁ、大丈夫だな! うん、良かった……この重たいくらいに深い愛も、むしろ俺にとってはちょうどいい。これくらい愛されていないと、自己肯定感の低い俺はすぐに不安になってしまうので、魔王は本当に理想のお嫁さんだった。
「じゃあ、これからもずっとだなっ」
「うむ! ずっと、ず~~っと一緒だ!」
昼間っから、俺たちはイチャイチャとお互いに抱きしめ合う。
ああ、なんて幸せな日々なんだろう。
幸せ過ぎて死にそう、なんて表現はおかしいのだが。
本当に死にそうなくらい、俺と魔王は幸せだった――




