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アラフォー社畜のゴーレムマスター  作者: 高見 梁川
第三章
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第八十二話 ランクテストその2

「参る!」

 先ほどの電撃突破サンダーブレイクも速かったが、今度のはそれ以上だ。

「――召喚サモン盾騎士シールドナイト

「四体目かっ! まったく底が知れぬ!」

 たちまちサイクロプスゴーレムを置き去りにしたデビットの前に、大きなタワーシールドを装備した騎士が現れた。

 せっかくサイクロプスをすり抜けたというのに、これでは限がない。

 そればかりか左右からはグリフォンゴーレムが、背後からはサイクロプスゴーレムがデビットを追う。

 完全に包囲されたというのに、デビットの口元はうれしそうに笑っていた。

「たまらんなあ! この緊張感いつぶりのことだっ?」

「…………年寄りの冷や水は勘弁してくださいよ」

 実力のほどは認めていても、実際に目を見張るものを備えていても、ロートルには本気を出しがたいものだ。


「どうしたどうした? まだまだ鍛え方が足りんぞ! うりゃああああ!」

「爺さんやめとけって!」

「俺の若いころはこんなもんじゃなかった!」

 ――――ゴキリ

「うおおおおおおおっ! 腰がっ! 腰がああああ!」

「だからやめとけってあれほど……」


 若い者には負けない、とばかりにわざわざ大きな荷物を持ち上げる老人がいる。

 確かに鍛えているのだろうし、本人にとっては大したことはないのかもしれない。だがそれを見た若者がどう思うかは別問題である。

 本人の意思と実力とは関係なしに、心配してしまうのが一般的な人情ではないだろうか。

 それは決して老人を軽んじているわけでもなく、見下しているわけでもない。経験則から弾き出したリスクを心配しているだけなのだ。

 ――――うざいのは変わらないが。


 まさに松田が今感じているのは、そんな理不尽な思いであった。

 元気な爺さんというのはどうにも戦いづらい。

 ある意味尊敬できる実力者であるほどその思いは強くなる。むしろクズのような爺さんのほうが容赦なく戦える。

二重影ダブルシャドウ!」

「やばっ!」

 かつてシェリーが使用していた分身スキルを見て松田は慌てた。

 さすがにこの状況で二人のデビットを相手にするのは厳しい。それでもかろうじて対応が間に合ったのは、すでに見たことのあるスキルであったことが大きいだろう。

 咄嗟にグリフォンとサイクロプスを消し、松田の前に四体の騎士ゴーレムを召喚する。

「うぬっ!」

 松田の正面を守るのが盾騎士一体だったのに、さらに四体の騎士が現れたことで、デビットはやむなく左右へ分かれ仕切り直した。

「――――驚いたな。五体ものゴーレムを同時に制御するか」

 デビットは心底驚嘆していた。

 五体という数だけでも規格外。さらに松田はその五体を完全に制御下においている。

 ただ操っているというだけではない。同調しほぼ一心同体として制御しているということが驚きなのだ。

 かつてデビットの宝石級であった仲間でも同じことができる魔法士は一人としていない。

「が、そのままでは私には勝てんぞ?」

「困りましたね。そろそろ十分経つから終わりにはなりませんか?」

「それでは私が面白くない!」

 身もふたもないことをデビットは堂々と言い放った。

 探索者を引退してより今日ほど心が震えたことはない。この興奮を、愉悦を捨て去るつもりなどデビットには毛頭なかった。

「倒したら宝石級に認定するといったろう? 自分が言い出したことを悔やむんだな」

「うわああああっ! 俺の馬鹿!!」

 年寄をやる気にさせてはいけないとわかっていたはずなのに。つい格好いいこといってみたくなった己が憎い!

「五体ものゴーレムを操ってみせたのは見事! だがそれだけで敗れるほど宝石級は甘くはないぞ!」

 かつて迷宮攻略のトップチームに君臨したプライドにかけて、デビットは全力で松田を倒すつもりであった。

岩斬剣ロックブレイド!」

 盾騎士であろうと、デビットの剛剣を防ぐにはまだまだ防御力が足りない。

 巨大なハンマーで潰されたかのように、二体の盾騎士はぺしゃんこにされた。

「な、なんだああああっ?」

 剣なのにハンマーのような圧壊力。おそらくはデビットのもつスキルの効果なのだろう。

 まずい、と思った瞬間には続く第二撃でもう二体の盾騎士が倒されていた。

岩塔ロックタワー!」

 松田は高い岩の塔を錬金して、とっさに自分の身体を十メートル近く持ち上げた。

 ――――間一髪、デビットの剣が、たった今、松田がいた場所にある岩の塔を切り倒す。

 だが岩の塔から落ちるより早く、松田はグリフォンゴーレムを召喚して空の上へと避難した。

「…………驚いたな。岩を錬金して空に逃れるとは」

 呆れたようにデビットは空を見上げる。

 二重影からの岩斬剣は、一対一の戦闘においてはほぼ無敵を誇っていた。

 盾役の戦士をもってしても抑えきれない破壊力と、二重影による同時攻撃。白兵戦闘に慣れていない魔法士など鎧袖一触だと確信していた。

 その攻撃が避けられたのである。しかもデビットが攻撃する手段の少ない空中へと逃げられた。

 衝撃を飛ばすなどの中距離攻撃もないではないが、それだけでは松田には通じまい。

「――召喚サモン、ゴーレム」

 デビットの前後に新たなゴーレムが召喚された。

 しかも生命力の高いキマイラ型のゴーレムである。もっともゴーレムが生命力が高いかどうかはわからないが。

「いったいいつまで魔力が続くのだ?」

 先ほどから松田は何体のゴーレムを召喚しただろう? そしてどれほど制御し続けていることか。

 そもそもゴーレム魔法というのは燃費がひどく悪いことで知られている。

 これほどポンポン召喚するものもないし、さらには十分以上も継続で複数を制御してるとか頭がおかしい。

「まだ一割も使ってないんですがそれは」

「なにそれ怖い」 

 デビットと松田では常識が違う。松田はあくまでも自分が軍団規模でゴーレム制御できるのを隠して手加減している。

 たかが五体程度制御するのは遊びも同然、なんら負担となるものではない。

 器用にキマイラの尻尾と爪の攻撃を避けながら、デビットは反撃の機会を探った。

「――――まずい」

 あと少しで二重影のスキルの効果が切れる。それに開始からいくつものスキルを連打して残る魔力も三割を切っていた。

「もしかして時間切れですか?」

「いやいやいやいや! この程度歴戦の私には危機のうちにも入らないぞ?」

 といいつつも事態を打開する手段を都合よく思いつけるはずもない。

 ようやく余裕をなくし始めたデビットに松田は意地の悪い笑みを浮かべた。

「ちょっと本気出しますよ」

「はああ?」

 キマイラだけなら二重影が解除されてもなんとかなる。

 しかしここにきて槍騎士ゴーレムの追加は厳しかった。もう一度二重影を発動するとしてもこれではじり貧だ。

岩槍ロックランス

「……やめてください。死んでしまいます」

 二重影の時間切れまで一分を切ったところで、松田は数百本にも及ぶ岩の槍を空中に浮かべて待機する。

 キマイラに騎士ゴーレム、そして味方ごと殲滅するつもりでい岩槍を雨のように降らされたら、さすがのデビットも無事にはすまない。

 というより普通に死ぬだろう。

「探索者タケシ・マツダを宝石級探索者と認める。…………君の勝ちだ」

 使い捨てにできる汎用性の高いゴーレムが、これほど実戦で手ごわいものだとは。

 デビットは無意識に松田に感じていた重圧から、全身をぐっしょりと冷や汗に濡らしていたことにようやく気づいた。

 だがそれは決して嫌な気分ではなかった。



 その後、松田に続きステラとディアナのランクテストも行われた。

 どうやらデビットもディアナが人造人間であるとは気づいていないようなので、あえて指摘はしないでいる。

 結果からいえば、松田と同じく本気を出せないといっても二人とデビットは相性が悪すぎた。

 かろうじて善戦したのは速度スピードで対抗できたステラのほうである。

 しかし人狼の力を解放できない以上、力負けしてしまうのはやむを得ない。

 むしろ一矢報いるだけの戦闘センスがあることを喜ぶべきであった。

 見事金級に認定されたステラに対し、ディアナはいいところがなかった。

 完全な後衛型のディアナには白兵戦闘に特化したデビットを防ぐ術がない。

 松田とステラの前衛があれば、ディアナの火力は恐ろしい効果を発揮するのだが。

「少し自分で自分を守る術を身につけておいたほうがいいぞ」

 思わずデビットが心配してしまうほどあっさりと喉元に剣を突き付けられ、ディアナは屈辱に震えた。

「く、屈辱です…………」

「わふぅ? ディアナは銀級ですか?」

「納得いきませんわっ! かくなるうえは禁呪で一心不乱の大殲滅を!」

「――魔力供給カット」

 そんな物騒な魔法をこんなところで使われてたまるか。

「そんな……私の名誉がっ! プライドが!」

「これからレベル上げ頑張ろう、な?」

 かつて世界を震撼させた絢爛たる七つの秘宝の首座、終末の杖の誇りは無惨な結果に終わったのである。

「わふわふ?」

「そんな目で私を見ないで! 同情なんていらないいいい!」

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