序章 -前編-
今回、初の投稿です。
見切り発車のため序章部分しかまだ書けてません。(2015.10.13現在)
甘口、辛口のご意見お待ちしております。
ここは五つの大陸が覇を競い合う世界――
北には魔法を特殊な技法で依代となる機械へ定着させる技術――魔導技術――を極めようとする〈ライネリア大陸〉
この大陸では〈ゲシュニア帝国〉が最先端の強力な魔導兵器を使い、大陸全土を征服している。
西北西には《屈強な肉体こそ人類最後の砦となる》という蛮勇さを誇る〈ミューテニア族国〉にて統治された〈ミューテニア大陸〉
南西には〈聖遺物〉である〈神聖剣〉を抑止力に世界統一を目指す〈神聖国〉
大陸全土を〈聖教〉が保持する〈神聖騎士団〉で固めており、外敵からの侵入を跳ね除けている〈シュテイリッヒ大陸〉
東南には〈精霊族〉を筆頭に〈亜人種〉が身を寄せ合いながら共生している〈グルト大陸〉
東には世界を手に入れようと力を蓄えている〈魔族〉の住まう大陸〈レクト大陸〉
これらの五つの大陸がこの世界の全てである。
・・・
帝国暦四○三年、ある日の正午――
ゲシュニア帝国の第一五都市、通称〈魔導特区〉にて日常茶飯事の爆発事故が発生していた。今回の爆発被害は魔導研究区画が全壊するほどの物であった。
そんな都市の存在意義が無くなったと言っても過言ではない状況だが、安全圏の外壁上からは研究員たちが熱のこもった視線で瓦礫を眺めていた。
「すばらしい……」
こんな惨状の中、研究員の誰かが口火を切るやいなや歓声が巻き起こった。
「これは使えるぞ!」
『この数値を維持できるのであれば魔導は更に進化を遂げたと言っていいでしょう!』
「いや、維持ではなく更に高みを目指さずして何が魔導特区だろうか!」
『我らはまた一歩、神へと近付いただろう!』
ここで騒いでいる彼らは〈魔法〉を研究し〈魔導兵器〉を開発する〈魔導技師〉と呼ばれている。そんな常日頃、解析した魔法を増幅増大させ、兵器となった魔法を見ている彼らであっても今回の爆発は想像以上の結果であった。この爆発を起こした魔導技師以外は。
現在の帝国が保持している魔導兵器の中で特に有用な兵器は全て、たった一人の魔導技師によって生み出されている。
四歳の誕生日に軍人の父に連れられ、祝砲宜しく〈ギュンター弐式・焔〉の火炎放射を間近で見た彼女は〈魔導技術〉に魅せられた。
彼女はすぐさま手頃な魔導兵器を父にねだり、オーバーホール待ちの兵器を手に入れる。
手に入れた兵器を解体しては組み立てる毎日を繰り返し、三ヶ月で機械工学を習熟。続いて、魔法を機械へ定着させる技術〈ルスト式刻紋術〉を現物の兵器という、生きた教材から紐解いていった。
通算六○○機目となる兵器で彼女は今まで学習してきた知識を総動員し、刻紋と機械の構造に手を加えた。その結果、元々は水を球体状に形成し射出する物が、今までの三倍の水を前述の球体サイズに圧縮し射出。その後、物体へ当たる際に内包した圧力を利用し、スパイク状に変形させた水が炸裂するようになった。これにより、敵を殺傷するのに数多の射出が必要だった兵器が、一度でも当たれば殺せるという兵器に生まれ変わったのだ。
この彼女の功績は瞬く間に帝国内を駆け巡り、帝国には
――《魔導に愛された少女》
が居ると大陸全土を震え上がらせた。
・・・
とある日の夜――
ミューテニア大陸のとある村落に赤子の声が響いた。
「お前は俺の名を受け継ぎ、次の世代を率いなければならん。次の世代では魔族共も神聖野郎共も動き出しそうだ。だからお前には更なる力を持ってもらわねばならん。故に俺はお前にこの名前を与えよう。《力》とな! お前の名はリル・ザイ・ミューテニアだ!」
生まれたての赤子に名を与えている男は、このミューテニア大陸を統べる〈ミューテニア族国〉の現族長、ザイ・クワルフ・ミューテニア。ザイは赤子を天に掲げ、祝詞を唱え始めた。
祝詞を唱え終えたザイは我が子であるリルに、今後来るであろう戦いへ向けて最初の訓練を施す。
ミューテニア族は自己身体能力強化の魔法のみを使い、超至近距離での白兵戦を好む。ザイはその中でも異端な存在として名が知られている。自己身体能力強化ではなく、術者の身体に別の生物の特性を付加する〈魔獣化〉を使用する。この魔法はザイが作り出したオリジナル魔法であり、非常に高い魔力が必要になっている。
魔獣化の中でもザイは〈炎磑竜化〉という炎を鎧として身に纏う魔法を使用している。単純な炎を撃ち出す魔法の五倍程度の魔力を消費すると言う。それは、ザイが全魔力を使って発動しており、三日に一度しか使用できない。
三日に一度となると全然使えないように感じるが、毎日戦闘をしている訳ではないので現状で不自由を感じていないらしい。
――《灼熱のザイ》
炎磑竜化したザイはそんな通り名で呼ばれている。
そんなザイは戦闘が始まる訳ではないのに炎磑竜化し、その鉄をも溶かす炎を纏った手を、我が子の背中に触れさせたた。
一瞬で周囲に肉が焦げる臭いと耳に付く音が広がった。
ザイが我が子のリルに課した最初の訓練とは〈痛み〉を知ることだったのだ。身を焼いたのは一瞬だが鉄を溶かすほどの高温だ。赤子の肌には焦げと爛れが広がっている。ザイは既に魔法を解除しており、今度は水に浸した布を背中にゆっくり被せていく。
赤子は身を焼かれたにも関わらず元気に泣いていた。
ザイは治癒魔法が使える者を大声で呼び起こした。
「お前は俺の炎に耐えたのだ……。これ以上の痛みなどそうはあるまい……。リル、お前の未来に力と勝利の栄光があることを祈ろう……」
・・・
皇暦六○六年八月中旬――
〈聖教〉の法皇より勅命が下った。それは今まで放置をしてきた辺境地域の集落へも聖教を広めろと。
これにより各辺境地域へ向けて〈神聖騎士団〉が次々に派遣されていった。
その手はここ、シュテイリッヒ大陸最北端に位置するリッチ村にも及んだ。
この地は北の海と残りは切り立った山に囲まれた閉鎖的な村だ。他の村や他の国との外交などもなく、今までひっそりと暮らしていた。
ある日、そんな村に異変が起こる。
漁に出ていた者が血相を変えて村長の家へと入って行ったと言う。そしてその者は村長の家に入るまでの間、あることを叫び続けていた。
――デカい船がいっぱい来てる
そう叫び続けながら浜辺から路地を走り抜けていったと。
山へと鹿狩りに出ようとしている所だった青年が苦虫を噛み潰したような顔をし、先に村長の家を訪ねることにした。
コンコンと乾いた音を立てる扉の向こうでは男が必死に何かを話しているようだった。青年は構わず扉を開け、室内へと入った。
「おー、シャイードか。いい所に来てくれた。この者が話しておる内容は知っておるな?」
シャイードと呼ばれた青年の来訪を待っていたかのような村長。声を掛けられた彼は内心『頼られるのは嫌いじゃないが、俺や父に頼りすぎだ』と顔に書いたような表情を作る。
シャイードはよくこの村の厄介事を引き受けていた。そして、その代わりにと言うように色々な物を分けてくれるが、それはこの村に獣の肉を卸せるのが彼の家しかいないからだろう。
獣の肉を手に入れるのは非常に危険が伴う。それは海に出る漁とは比べ物にならない。漁の場合、相手にするのは撒き餌に群がる魚と押し寄せる波だ。しかし、狩りの場合は魔獣が相手となる。シャイードが今回狩りの目標にした鹿は〈雷鹿〉と呼ばれる魔獣だ。
「デカい船が来てるらしいな」
シャイードは村長にそう応えた。
シャイードはここへ来るまで知り得た情報をそのまま伝えたのだが、村長の顔を見る限りもっと問題は深いようだ。彼は自分がここに来た理由についても補足した。
「ただデカい船が来ただけにしては騒ぎ過ぎだったんでな……。恐らく俺らの力が必要になると思って足を運んだんだ」
村長はその言葉を聞き、一つ頷いた後に現在の状況について詳細を告げた。
沖に展開されている船の大群は白の布地に赤い十字架を掲げていた。その旗は彼らが〈神聖騎士団〉であることを意味する。この地に彼らが来る理由は明白だろう。〈聖教〉を広める。もしくは異教の撲滅。
この村は聖教のやり方が気に入らず大都市から逃げて来た者たちの寄せ集めだ。これ以上逃げる場所なんて存在しない。つまり、ここで聖教に膝を折るか、殺されるかのどちらかだろう。
「私たちが信じる神は聖教では邪悪なものとされている……。よって私たちには戦うしかないのじゃ……。シャイード……。私たちに力を貸してくれ……」
シャイード自身は神など信じていなかったので都市に居ても良かったが親は違った。シャイードの父は狩猟の神を信じており、敬虔なる異教徒だったのだ。
「俺は最初から戦うつもりだが……。その……なんだ……。俺には決定権が無くてだな……その……親父に聞いてくれ」
そうシャイードはまだ八歳を過ぎたばかりなのだ。一人の狩りは実力で認めてもらったが、これから戦うのは人が相手、ましてや騎士団を相手取った立派な戦争だ。シャイード自身の意志がどうであろうと、彼の父が勝手を許すはずがない。
「……そうじゃな。すまなんだ、シャイード。カルラを呼んできてくれるか?」
村長はシャイードに父親を呼んでくるように頼み、シャイードは親父であるカルラを呼びに飛び出していった。
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