転校生09
俺は昼休み、ぐてっと屋上の隅っこで丸くなった。
「大丈夫かー?白斗」
と、いちごみるくを隣でズーズー吸っている親友。
「なんで来たんだよ……
慎の立場なら率先して主人公やってるだろ?」
「そんな厚かましいこと考えてないぞー。
俺は外でみてる方が好きなんだけどね」
今日は珍しく人が少ない。
なぜかついてきた(ついてきてくれた)慎と二人っきり。
慎はその爽やかキャラでかなりモテる。
「本気出せば、セアちゃんも恋人にできるんじゃないか?」
「やめろー、どうしたんだ今日いつも以上イヤミったらしいぞ」
「べっつに……」
半分なんでわからないんだかと、ふてくされながら白斗はあんパンにかじりついた。
屋上から見える渡り廊下から四組へ向かっていく人影がよく見えた。
きっと、羽美を見に行ったんだろう。
1日足らずで校内のアイドルに成り上がった鬼才の持ち主。
教室がお祭り騒ぎすぎて逃げてきたのもある。
関わるのがイヤになるくらい、笑っちゃうくらい彼女はあり得なかった。
「選択で音楽だったか?事前に内容伝えてただけなのに、まさかのピアノもギターの演習も普通にこなしてたんだろ?」
クラスで分かれる選択制の実技教科で、羽美は音楽を選んでいた。
数々のピアノ熟練者のなかで異質なものを発揮した羽美がひいたものは、ヴォロドス編曲「モーツァルトのトルコ行進曲」。
「まだ全然できなくて」といいながら、途中まで一度も迷いを見せない演奏に、すごいのが来た……!と衝撃 を受けたのはいうまでもない。