日常04
「白斗、お前受かった?」
前の席の男子が授業終了のチャイムに合わせて振り返ってきた。窪田という。
こいつは、受かったな。
「いいや……悪いな、気遣わせて」
「あ、ああ。
あんま口外はしないでたのむぜ」
やっぱり嬉しそうで、楽しそうだった。
だいぶいい気分なんだろうな。
裏実力試験は普通は非公開で門外不出の禁句だから、自慢できるものではない。
「俺が受けてること、知ってたんだな?」
俺は精一杯のすごみをつけた声で、威圧的に窪田に問いかけた。
「お、お前くらい頭いいなら、受けるの当然だろうなって思ったんだ、それだけだ」
前を向いて言った合格者。
動揺の震え声がはっきり感じとれた。
今日から別格の扱いを受けることになるからこうやって、受けた者の情報も手に出来るんだ。
別に裕福が悪いといっている訳ではない。
これだから、金持ちは大嫌いだ。
「おい、中條、窪田」
「はい?」
「先生、中條さんは若瀬さんと職員室に行っていま す」
普通学科の教室に特別学科の先生が入ってきたら それはみんな驚くことだろう。教室がざわっとした。
「今日から四階の一組に」
「山崎先生、窪田です。
これからよろしくお願いします」
転科……!
教室中が 声にならない雰囲気を醸し出した。
すごいことに、今回の転科生徒は二人だけだった。
しかも二人ともうちのクラスの生徒だ。
しかしおかしい。
いつもならもっとたくさん合格者がでるはずなのに……一体……。
「うっそ、今の時期転校生?」
「これでも定期試験が終わるのを待ってみたいなのよ~」
「やだわね」
「そういや九十田さんさ、中学生の時の写真見せてくれんじゃなかった?」
「ふえ!?」
他愛ない会話をしている三人組女子。
ひときわ目立つ印象の少女の名前は九十田鳴美。
きつそうな見た目でありつつ、柔さもあり、このクラス五組でも一番のスタイルというまさにモテる要素で出来た子で、かなり女子にひがまれている。
「やだっ!黒歴史なのよ!」
おしゃれな三つ編みをつかみ、
「今だに黒歴史続いてるわよ!!」
と、泣きそうになって言った。
「九十田さん、かわいいじゃん」
「うち、黒髪より鳴美の髪色くらいがいい」
「ね、中性的な茶色だし」
「……ありがと」
前髪の分け目を気にしてくいくいいじりながら、九十田鳴美は過去を見ていた。
また新たなキャラが!
その名も九十田鳴美さん!
彼女も重要な人です。