白斗の本心01
「ああ…」
ため息だ。
悪態だ。
人って嫌なことがあったら全てが無くなればさいいとか思うものじゃないんだろうか。
それか、黒魔術とかでばれないように八つ当たりとか…。
俺だけか…?
なんて自問自答している脳内を誰かに覗かれたら、俺は完璧に変なヤツだ。否、実際の俺の顔には男友達と戯れるバージョンの仮面が貼り付けてある。
つまり何を考えようがこれはあくまで想像のなかの話だからどうでもいいってことで。
綱牙士白斗、私立東光高等専門学校1年。
彼は器用貧乏のために、器用貧乏のせいで普通の生活を送っていると思っている。それはちょっとこじらせてしまった中二病がでているだけで、本当に普通の高校生なのだ。
でも退屈この上ないということは 紛れもない事実である。
友人を建前でごまかし、大人が子供をまだまだ未熟だと思っている。ついでに勉強は好きじゃない。それでも周りに押されてやっているだけ、なんて変化のない場所なんだろう。
このいつまでも受からない実力テストと友人関係ならば 白斗は友人関係を優先するはずだ。
だが本心は そんなはずはないと言っている。
その代償はきちんと行動にあらわれているから。
§
「綱牙士、お疲れ様」
実力テストの合格通知はそんな言葉とともに返された(実力テストというのは それぞれの専門的な学科に移るためのものだ)。
「ありがとうございます」
と、毎度のやりとりも早く終わりにしたいものだなーと白斗は紙を開く。
(また…か…)
一応はちゃんとしたつもりだった。やっぱり男友達らにあわせすぎたか…。残念ながら全てが実力だけではどうしようもない。
意欲的な面も不合格の理由なんだと白斗は考えを改めようとしている時に、男友達の一人が俺の通知を覗き込んだ。
「あーあ、だよなあー。俺ら、おなじだよな~」
白斗がいる男友達グループはクラスでトップの人気を誇る集団だから離れるには惜しいわけだ。だからお前らのレベルにあわせているだけなのに…!
§
「クッソ……!」
ひとしきり愚痴を吐き終えた白斗はドサッっとソファーになだれかかった。
「偏差値に20近く差があるような奴に言われたくない!おなじだよなって…ったく」
白斗はそのまま寝ころび 妄想をはじめる。
「今日は俺が魔法使いになった夢でもみてやろうかな」
1年ほど前に人間関係の難しさを身をもって知った 白斗の仮面の下を見破れるものは ほとんどいない。
中学以来の友達ならまだしも、俺はその点で人の2倍近くのストレスをかかえている。
だから毎日このような発散が必要不可欠。
「じゃあな…現実…」
シャッターが下ろされた視界から意識が消えた。
……姉さん!!
ばかやろー…本当に。
3年前
「よ、白斗!」
「おう、待たせたな~」
白斗と白斗の親友の3人はショッピングモールの前の公園で待ち合わせをしてお菓子と部活道具の新調したあと、勉強会をすることになっていた。
近所で一番大きなモールには、この町中の人が訪れる。
「そろそろ初めての定期テストじゃんか、大丈夫そうにねーわ~」
と、朝原慎。
「部活停止になるんだよな…つまらん!!」
と、立川悠希。
ウルトラの愚痴をならべて皆で歩いていった。
ガー…
この開いてしまった自動ドア。
終わりへの始まり。
事が起こってからでないと、そうに表せない。
リセットボタンが押せたらなんて、これがゲームだったらなんて…思った。
「きゃああああ!!」
悲鳴がした。若い女性の声。
と同時におおぜいの人々の波は動いた。
ざわざわとその不穏の波が白斗たちにも届いた。
「なんだ、なんだ…?」
悠希が小声でささやく。
(この感じ……!)
前方の人ごみの中のぽっかり空いた空間から漂ってきた、悪い風。すっと頭をよぎるのは、大切な人が犠牲になっていないかということ。誰か全く知らない他人であるように、と祈ってしまった。
しかし、白斗のなかでの本能的な心のざわめきが、 現実となって現れていた。
はっきり、目の前で。
血、血、血……。
無惨な跡が、この静かなショッピングモールで何が起こったかを物語っていた。
「さつ、これ、さつじ……!白斗……!ヤバい、ヤバいって。逃げないとじゃん……!おい……白斗、なにしてっ」
慎の声が白斗の耳に届く前に、白斗は動きだしていた。視界に映るある人影が逃げたしたくなるような現実から、白斗の意識を引き戻していたからだ。
「ぐふふふふははははははっ、あはははははははは!!なあ、どんな感じ…?痛い?痛いよなぁ~痛くしてんだから、なっ!!」
この惨劇は、狂ったように笑いを浮かべる 中学生ぐらいの少年が元凶だった。嗜虐的な笑みでで倒れた女性を踏みつける。
それを見て出くわしてしまった人々が震え出して 下がっていく。
この壊れてしまった中学生は、私たちの生活に危害をくわえる 害虫であるが駆除できないなら逃げ出すしかない。
周りに干渉するということは誰かしら関わりができてしまうこと。誰かが、犠牲になるか、いいものを得るかだけだ 。
「頼んだよ、白斗」
悲しそうな、哀しそうな、彼女の顔が霞んで見えなくなってた。
「……うぅ」
リアリティーな夢からの最悪な目覚めを経て、ソファーから起き上がった彼の目の先には木目調のシックで落ち着いた色の写真たて。
「早く、誰か俺を助けて……」
こんな悪夢もう見ないように。
苦しい思いをしない、安らかな夢を見たかった。
なんてわけわかめ!とお思いでしょうが
主人公が一体どの人なのかわからないでしょう!?
うふふふふ!
ごめんなさいもう少しお待ちを。