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今日からはじまるファンタジー  作者: アメモリ
第1章 「語られる物語」
3/3

1 「王様に会ってみた」

 俺は今、さっきの可愛いメイドの少女、シェリアと一緒に、王城の廊下を歩いている。いかにも高そうな赤い絨毯が敷かれていて、上を土足で歩くのは申し訳ない気がしてならない。しかも、その廊下なのだが……。

 「……長い。どう考えても長い。ていうか、これ不便だろ? いつもこんなに歩いてるの?」

 「はい。王の間は城の中心にあるので、仕方ないです」

 じゃあなんでこんなでかい城を作ったんだよ。

 「で、あとどのくらい?」

 もう既に1時間近く歩いているような気がするが、一向に辿り着く気配がしない。

 「そうですね……、あと700メートルくらいでしょうか」

 「……そうか」

 そろそろ気力が尽きそうだ。

 「なんかさあ、テレポートみたいなのは出来ないの?」

 「ええ。この城の中では、王様を除いて、誰も魔法は使えません」

 「へえ……、なるほどね。ふーん、そうか……魔法ねえ」

 「魔法がどうかしましたか?」

 「あ、いや……」

 この世界には魔法があるのか……。まったく、一体何なんだ。俺は本当に異世界にトリップしたのだろうか。でも、……何故? 何もかも分からないことだらけだ。

 「着きました」

 その時、シェリアは急に立ち止まり、突然言った。

 「……あ、ああ、そうか。えっと……、あれ? 700メートルじゃなかったの? 着くの早くない?」

 「あ、70メートルの間違いでしたね。すみません」

 あ、微笑んだ。可愛い、許す。

 「……まあ、短い分には良いけどさ」

 7000メートルの間違いでした、とかだったらさすがに笑えないからな。脚が疲労骨折する。

 で、辿り着いた扉は……、

 「……おお」

 素晴らしく輝いていた。ちりばめられた金色の装飾が美しい輝きを放っている。かといって、派手すぎもしない。なんとも表現できないが、なんかもう、扉が一種の芸術と化していた。

 シェリアは、その扉の中央をノックした。案外軽い音が響く。

 「シェリアです」

 「入って」

 扉の向こうから声がした。王様、なのだろうか。まるで少年のような声だ。

 「ここで少し待っていてください」

 「あ……ああ、分かった」

 シェリアは頷いて、扉に向き直り、

 「失礼します」

 扉を開けて中に入った。


 「ふう……」

 自然に溜息が漏れた。

 「なんだか疲れたなあ……」

 1時間も廊下を歩かされたせいではない。いや、もちろんそれもあるのだが、むしろ、精神的に疲れた。

 ――なんだか胸騒ぎがする。当たり前だ、落ち着いていられるわけがない。こんな経験は初めてなのだ。自分がどうなったのか分からない。どこにいるのか分からない。そして、その理由も分からない。

 なんだか、急に一人でいるのが怖くなってきた。どうしようもない孤独感を感じ、いてもたってもいられなくなって、扉に耳を近づけてみたが、話し声はまったく聞こえない。

 と、その時、不意に扉が開いた。

 「お待たせしました。上がってください」

 顔を覗かせたのはシェリアだ。

 「あ、ああ……、うん。えっと……、し、失礼します」

 ふう……、びっくりした。

 俺が中に入ると、不思議と勝手に扉が閉まった。

 そのままシェリアの後を歩く。部屋は、思っていたほどの広さはなかった。中もかなりシンプルな造りになっていて、無駄なものが全くない。どこか、この城の雰囲気とはかけ離れている。

 そして、ついに王様が姿を表した。想像よりずっと若い。繊細な顔の造りをした若い青年で、王様、という雰囲気とはかけ離れている。髭とか生えてないし。

 「あ、えっと、こんにちは」

 「うん、まあとりあえず座って」

 「ど、どうも」

 とりあえず、言われるがままに向かいの黒いソファーに座った。

 「えっと……、まずは、はじめまして。僕はナギっていう。君の名前は?」

 「えっと……、一ノ瀬祐希です」

 「イ……イチノセ?」

 「ああ、ユウキでいいですよ」

 「ユウキ、か。うん、会えてとっても嬉しいよ。あと、喋り方は普通でいいよ」

 「あ、うん。分かった」

 なんだか拍子抜けだ。王様がこんな軽いやつでこの国は大丈夫なんだろうか。もっとこう、厳ついご老人みたいなのを想像していた。それで、一人称が「ワシ」とかね。

 シェリアが机に紅茶を三つ並べて、俺の隣に座った。

 「隣、失礼しますね」

 「……」

 おい近いよ。あんたメイドだろ、何やってんだ。

 そして、俺が紅茶を一口すすったあと、ナギが話し始めた。

 「えっと……、まず初めに、言わなくちゃならないことがある」

 ナギは、真っ直ぐ俺の目を見て言った。

 「……何だ?」

 「ユウキ、君に残された時間は、あと三日だ」

 「……え?」


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