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第一話『桜吹雪』

今年もこの季節になった。



島の桜は満開になり、学校へ向かう坂道の桜は俺たちのことを温かく見守ってくれている。



「あ! ユーキくん!」



感慨深く桜の道を歩いていると、背後から聞き覚えのある声が耳に入ってきた。


タッタッタッと、軽快な足音を立てながら少しずつ俺に近づいてくる。



「てぇい!」


「ぐはあっ!」



俺の背中にとんでもない激痛がはしる。


彼女の華麗なるとび蹴りが襲ってきたのだ。



「えへへ。久しぶり、おはよー!」


「おはよーじゃねえよコラッ! ブレザー汚れるだろ?」



俺は完全に届かないとわかっている背中に右手をのばし、

付いていると思われる泥を払う。



襲い掛かってきた彼女の名前は佐咲──ささきりか。


一昨年の冬にこっちに引っ越してきて、俺の通う学校に転入してきた。



夏休み、冬休み、春休み──長期休暇が終わった始業式の日になり、登校中に出会うとこうやって、俺にとび蹴りをかましてくる。


彼女との最初の夏から、このアクションは恒例行事になった。



今から二年前の春、こいつと仲良くなったのが間違いだったのかもしれないと、最近つくづく思う。

まあ、それでも彼女と一緒に過ごす毎日は、とても充実して楽しい日々だ。



「いやー、やっぱりやらないと、新学期迎えた気分にならないじゃん?」


「俺は始業式だけで充分だ。このとび蹴りなんか利点あるか?」


「あるよ? 私のストレス解消と、Mなユーキくんが快感を覚えるってこと」


「聞いた俺がバカだったよ」



思ったとおり、この行事には特に意味はなく、ただ俺をかわいがってくれているだけだった。


しかし若干Mであることは正直否定しない。

好きな人に絡んでもらえるのなら、それが痛い事でも、俺はうれしい。





「そういえばさぁ」



俺がまた、制服のズボンに両手を突っ込みながら歩いていると、隣を歩くリカが声をかけてきた。

風で顔にかかった髪を後ろに振り払いながら。



「この桜並木、無くなるって話聞いた?」


「えっ、そうなのか?」


「うん。先生や教育委員会の人が、物騒だから切るって……」




物騒──確かにそうかもしれない。













たしか、一昨年からだっただろうか。




寒さには強いつもりでいる俺でさえ、

マフラーをしてくるほど寒いこの冬の季節に、

桜の花が満開に咲くようになったのは──

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