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遭遇、サンタと少年、屋上で

作者: 雨田豊

警告。本作品は変人サンタを描いたショート・ショートであり、正統派の夢あるサンタ像をお持ちの方々は読むことをお勧めしません。

「あんた、こんなところでなにやってんだ?」

 拓哉は学校の屋上で、フェンスによじ登っていた、サンタ服を着た男に言った。

「むお、見つかった!?」

 男は足を滑らせて、尻餅をつく。が、すぐに慌てて立ち上がると、

「しょ、少年よ、わしはサンタクロースだ! メリークリスマス!」

「見れば分かる。何でサンタが真夜中に学校の屋上にいるんだ」

「ホウホウホウ。そ、そうかプレゼントが欲しくて、わざわざ私を探しに来たのか。最近の若者にしては関心、関心」

「人の話聞けよ。何か焦ってないか?」

 サンタは右手に持っている膨らんだ白い袋に手を入れると、

「何をいう。わしは『プレゼント欲しい子誰だ?』がここで反応してな、ちょっと探しに来ていた所だった」

 黒光りする銃のようなものを出した。

「……それ何だよ」

「見てのとおり、『プレゼント欲しい子誰だ?』」

「ちょっと待て、どう見ても銃だから。笑いながらサンタがそんなの持ってると怖いから!」

「おお、反応しとる、反応しとる!」

 サンタは銃を見たまま、クルクル回転し始めた。

(自分に反応してんじゃねえのか……って、もしかしてこいつ、いかれた危ない変質者で危険なオッサンかもしれない。……そうじゃないにしてもこれは本物のサンタとは言えない、変態だ)

「……仕事がんばれよ、じゃあな」

 拓哉は満面の笑みを浮かべながら、さりげなくその場を去ろうとした。

「ま、まさか君がプレゼント欲しい子だったとは!」

 拓哉は走った。全力で。

 が、

「ちょっと待つのじゃぞ、今プレゼント出すから」

 サンタはいつの間にか、拓哉の前に立ちふさがっていた。

(な、なんで!?)

 拓哉は冷や汗を流した。

 サンタは先ほどの袋から、

「ほれ、プレゼント」

 使い古された皮の四角い物体を取り出した。

「……なんだ、これ」

「財布じゃ。見てわからんのか?」

「ちょっと、見せろ」

 拓哉は財布をサンタから取り上げて、中を広げた。

「って、これ田中先生の財布!?」

 財布のカード入れに、妻と娘をはさんで幸せそうな笑みを浮かべる、担任田中の写真があった。

「ホウホウホウ。どうじゃ、現金で五万、その他色々おまけ付きじゃぞ」

「やっぱりお前、泥棒じゃないか!」

「ち、違う。偶然、鍵がかかった職員室の中で拾ったのじゃ」

「……警察呼んでもいいか?」

 サンタは田中の財布を指差すと、

「あー、こんな所に誰かの財布が落ちてるぞ。そうじゃ、プレゼントのついでに、トドケテアゲヨウ。わしってグットサンタ!」

「いや、落ちてないから。しかも何かカタコトに聞こえるぞ」

 サンタは急に真面目な顔になると、

「――さて、冗談はここまでだな」

「おい、何でいきなりシリアスになってんだ。誤魔化されないぞ」

「拓哉。君こそ何でこんな時間に、学校の屋上なんかにいるのかね?」

 拓哉は突然ふいを突かれて、ぎょっとしながら、

「あ、いや、僕はその……サンタさんを探しにきたんだ!」

 サンタは溜息をついて、

「嘘、じゃよ」

「な、なんでわかるんだよ」

「姉の供養か?」

 拓哉の姉は四年前、この屋上から飛び降りていたのである。それも今日、クリスマスにだった。

「……なんでだよ」

 と、拓哉は言った。

「実は、拓哉のお姉さんにちと頼まれてな」

「え?」

 サンタは白い袋をかさごそ探して、手の平サイズの小さな、ラッピングがかかった、リボン付きの箱と、一枚の便箋を拓哉に渡した。便箋には拓哉のよく見慣れた、ちぐはぐで読みにくい文字が書かれている。

「……ばか、やろう」

 拓哉の頬から、空から降る雪よりも寂しい粒が便箋に落ちた。

”クリスマスプレゼント、遅くなってごめんね――姉さんより”

「お前さんの姉さんはあの世で楽しくやっておったぞ」 

 と、サンタは言った。

その言葉が拓哉にはなにより嬉しかった。

「――そうか」

 と、拓哉は泣きながら微笑んだ。

 ふと、拓哉はあることを思いつくと、

「あんた、あの世に行けるのか?」

 と、拓哉は涙を腕で拭って言った。

「ホウホウホウ、わしを誰だとおもっとる。天下のサンタクロースじゃ。宇宙の果てだろう異世界だろうと、どこでも行けるぞ」

「じゃあ、姉さんに伝えて欲しい――僕も楽しくやってるから、って」

「サンタクロースの名に誓って、伝えよう」

 と、サンタは肯いた。

瞬間、サンタの目の前に、縄はしごがすっと降りてきた。サンタは白い袋を肩にかけ、縄はしごにつかまると、

「ホウホウホウ、縁があればまた会おう! メリークリスマス!」

 と、拓哉に笑顔を向けながら、縄はしごがゆっくりと上へ登っていく。

拓哉はサンタが見えなくなるまでずっと、白い粒がちらつく夜空を眺め続けた。

「メリークリスマス」

 と、拓哉は小さく呟いて屋上から去る。

 拓哉が教師田中の財布がないことに気が付いたのは、それから二十六時間後だった。


こんなサンタいたらおもしろいだろうな。

それを考えて書きました。ちょっと、勢いで書いた部分があり、むちゃがある箇所があると思いますが、どうかご了承してください。(なんの了承だか)


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