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ひとつの願い

作者: えん

 ある日、僕は父の書斎でレポートに使う参考文献を探していた。父は様々な文献を集めることを趣味としている人で、膨大な量の書物が書斎には詰められていた。

 数分探したところで、目的の本を見つけたが、わずかに手の届かない所にあった。椅子を使ってとろうかとも思ったが、あとちょっとで届きそうだったので、ジャンプして取ることにした。

 「よっ、と」

 よし、届いた――と思った瞬間。

 ――バサバサバサっ

 さらに上に積んであった本がバランスを崩して落ちてきた。

 「あー……やっちゃった……」

 頭の上に落ちてこなかったのは幸運だったが、この足元に散乱している本を片付けなければいけないのかと思うとため息が出る。

 しかしこのままにしておくと間違いなく怒られるので、仕方なく椅子を踏み台に持ち出して元の場所に戻すことにした。

 「それにしても、ほんといろんなジャンルの本があるよなぁ」

 難しそうな医学の専門書から子供の育て方といった育児書まで統一性なく散らかっている。少しは整理しなきゃなぁ…と思いながら適当に手にとっていると、何故だか一冊の本が目にとまった。

 「ん…?こんな本あったっけ…?」

 僕も書斎のすべての本を把握しているわけではないが(なにしろ数が多過ぎるから)その本は少々特殊な感じがした。

 「願いをひとつ叶える本……?」

 なんだこれ。自己啓発本か?それにしても、表紙はほこりかぶっていて何だか草臥れた本だった。なのに……何故だかとても興味が惹かれた。それは、僕にいま叶えたいことがあるからかもしれない。

 埃を手で軽く払い、そっとページを捲る。


 ―――貴方の願いをひとつ叶えます。方法はとっても簡単!この本を太陽にかざし、強い思いで願いを口にすればいいだけです。下記の何点かの注意さえ守れば、貴方の思いのままです!

 attention!

 ・願いはひとつしか叶えられません。

 ・あと何個願いたいなど、願い事を増やすお願いはできません。

 ・自然の摂理に逆らうことはできません。つまり、人を殺すことは出来ますが、生き返らせることはできません。

 ・1度言った願いを取り消したり変更することは出来ません。


 普通に考えれば、馬鹿馬鹿しいと思って片付けてしまうだろう。

 しかし、僕は試すことにした。書斎を一旦出て、リビングから庭に出る。そして本を太陽にかざして、言った。


 「奥野弓枝さんが、僕のことを異性として愛してくれますように」


 その時、本が光った気がして、思わず僕は目を閉じた。そして再び目を開けると―――何事もなく本はそこにあった。―――いや、何事もなく、というのは語弊がある。正確に言えば少し変化していた。……タイトルが消えていた。

 「これは……どういう仕組みなんだろう」

 僕だって本当にこの本が願いを叶えてくれると思ってはいない。そりゃそうだろう。思っただけで願いが叶うなどどこのおとぎ話だ。好きな人がいるのに本人に告白する勇気がないから、おまじないと思ってやってみただけだ。……自分で言って悲しくなってきた。ため息をついて、家の中に戻る。そういえばレポートに使う文献を探しに来たんだった。そうして僕は書斎に戻り無事目的の本を探し終え、レポートを完成させるべく自室の机に向かったのだった。

 そうして、僕はこの本のことを忘れた。


 そう、忘れていたのだ。今日この時まで。


 「突然呼び出しちゃって、びっくりしたよね……でも、どうしても伝えたくて……。わたしはあなたのことが好きです。良かったら、付き合ってください!!」


 僕は、憧れの奥野弓枝さんに、告白された。

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