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作者:

別れた彼を忘れられない、その気持ちは何と呼ぶのでしょうか。


ちょっと暗いお話。

まだ、涙が出た。



深夜にひとり、部屋で膝をかかえる。

膝の間に顔をうずめて体を小さく丸めた。

このまま、小さくなって、そのまま消えてしまえたら楽なのに。


その考えに小さくわらう。


そんな夢想をするより、簡単に消える方法なんていくらでもある。

引き出しに入ってる刃物で手首を切っても、そこのベランダから飛び降りても、世界から消えることができる。


それをしないのはまだ心のどこかで希望を抱いているからだ。


彼が「今までのことはウソだよ。」と笑って会いに来て、抱きしめてくれるのではないかと。



いまどき、身分違いの恋なんて物語の中の事だと思っていた。だけど彼と会ってから、今でもあることなのだと身を持って知った。

知人の紹介で出会った旧華族という彼。


「初めまして、よろしくね?」


初めはただ柔らかくわらう人だと、そんな印象だった。

そこから、彼の秘められた熱を知っていくにつれて惹かれていった。

それでも、この人の傍でふたりで幸せになるのだと、ぼんやり夢見ていた。


「僕は望みを諦めない。」


小さな彼の幸せと、彼の実の家族の命を奪った親族に復讐をするのだとわらった。

そのために好きでもない女と結婚するし、子作りだってするのだと、穏やかにわらった。

わたしはそのときに初めて最初から彼の描く人生にはいなかったのだと、悟った。


「さようなら。」


最後まで、穏やかにわらって彼は別れを告げた。



1ヶ月経っても、頭から心から、体だって彼を忘れることができない。

もう、指が覚えている彼の携帯番号。


ゆっくり震える指で最後のボタンを押せば、聞こえるコール音。

番号を変えることだってできるのに変えずにそのままなのは、捨てきれない彼の優しさなのか、ずるさなのか。


そんなのはどっちだっていい。




『・・はい。』

「わたし、です。」


あなたの、これからにわたしがいる隙間があるならば、


「あのね、」


わたしは、そこにしがみつく。


「あなたをあいしているの。」


この気持ちが憎しみなのか愛しさなのかもうわからない。

手首を切って消えてしまった方が、苦しくないかもしれない。

ただ、あなたと人生に痕を遺させて。



「あなたをあいしているの。」

生きる中でいろいろな人と関わっていくけど、その中で忘れられていくのは悲しいよな、と思って思いついたお話です。

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