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第8話:日常の混乱

朝の教室、ユイは制服のリボンを整えながら机に座った。

昨日の複数衣装の試用で得た興奮と恐怖の余韻がまだ残る。掌から光の余韻が微かに残り、周囲の目に気づかれないかと、心がざわつく。

「ユイ、大丈夫?」

隣に座るミナが小声で心配そうに尋ねる。ユイは微笑むが、口の中は乾いていた。

授業中、机の下で軽く手を握ると、掌から微かな光が漏れた。気づかれぬように隠すが、机の上の紙がふわりと浮く。教師が眉をひそめ、クラスメイトがざわめく。

「……や、やっぱり……まだ制御できない」

昼休み、ユイはバイト先へ向かう。カフェのカウンターで注文を受けながら、掌の光を押さえ込むが、コーヒーカップがひとつふわりと浮いてしまった。お客さんの驚きの声、同僚の視線。心臓が跳ね上がる。

「ごめんなさい……本当にごめんなさい!」

ユイは赤面しながら謝罪する。ミナがすぐに駆け寄り、肩を叩く。

「ユイ、大丈夫。みんなきっと驚いただけだよ」

けれど心の奥では、自分の力が制御できないことへの恐怖が膨らんでいた。

街中で光が暴走したら、誰かを傷つけるかもしれない――その思いが、胸を締め付ける。

バイトの終わりに、ユイは路地でひとり立ち止まった。掌に残る光を見つめながら、静かに息を吐く。

「……私、もっと強くならなきゃ」

そのとき、背後からレオンの声がした。

「ユイ、能力は楽しむだけじゃなく、責任も伴う。自分だけじゃなく、周囲の安全も考えろ」

ユイはうなずき、光を掌から消した。街の灯りが反射する中、少しずつだが自分を律する決意が胸に芽生える。

喜びと恐怖、非日常と日常。ユイの日常は、これまでとは違う混乱と学びに満ちていた――そして、この混乱こそが成長の第一歩となるのだった。

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