第5話:SNSでの話題
夜のアパートで、ユイはスマホの画面をじっと見つめていた。
今日、街中で起きた小さな奇跡――掌から光が零れ、子猫や花を舞わせた出来事――をSNSに投稿したのだ。
通知音が鳴るたび、胸がぎゅっと締め付けられる。最初のうちは「いいね」も少なかった。でも、少しずつ数字が増え、コメントが流れ始めた。
「すごい…魔法みたい!」
「この子、天才コスプレイヤー?」
「可愛すぎる!」
一瞬、ユイの胸が軽くなる。
「……嬉しい」
けれど同時に、別の通知が目に入った。ライバルの投稿に混じる、冷ややかなコメント。
「またあの子が目立ってる」
「うまくやってるけど、演出がわざとらしい」
胸の奥がひりつく。誰かに見られて、評価されることの喜びと恐怖が同時に押し寄せる。ユイは思わずスマホを握りしめた。
「私……どうすればいいんだろう」
そこに、ミナからメッセージが届いた。
『ユイ、すごかったよ!私、動画見て鳥肌立った!』
文字だけなのに、ミナの温かさが伝わる。ユイは深呼吸して、少し笑った。
「……ありがとう、ミナ」
しかし、心の片隅に小さな不安が残る。光を操る力は楽しい。でも、制御できない部分もある。人々に迷惑をかけるかもしれない――その恐怖は、まだ消えていなかった。
翌日、学校でも話題になった。友人たちの視線、クラスメイトの囁き声、好奇と羨望が混ざったざわめき。ユイは胸の奥で小さく息を吐き、気づかれないように視線をそらした。
そのとき、教室の隅で、ライバルがじっとユイを見ていた。
「……見てる」
ユイは心の中でつぶやく。ライバルの瞳には、嫉妬と挑戦の色が混じっていた。
「私…もっと頑張らなきゃ」
夜、ベッドに横たわったユイは天井を見つめる。光と影、希望と不安。心がぐらぐら揺れる中で、唯一確かなのは、仮面の中の私――衣装の私――が、確かに現実を変え始めているという事実だった。
「……明日も、変わってみせる」
小さな決意が胸に灯る。画面の向こうには、まだ見ぬ世界が広がっていた。




