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第4話:初めての変化

翌朝、ユイはアクセサリーを首にかけ、魔法使いの衣装に袖を通した。

いつもの朝とは違い、胸の奥がじんわり熱を帯びる。衣装の生地の感触、手袋の刺繍、ローブの裾――すべてが現実以上に鮮やかだった。

「……本当に、変われるのかな」

深呼吸をひとつして、玄関を出る。空気は少しひんやりして、通りの人々はまだ寝ぼけたように歩いている。ユイは街中を歩きながら、小さな祈りのように手を握った。

すると、掌の先から淡い光がふわりと溢れ、歩くたびに小さな火花のような光が路面に散る。

驚いて立ち止まる。

「え……これ、私の……?」

その瞬間、近くを通りかかった子猫が、光に誘われるようにユイの足元に駆け寄ってきた。

ユイは思わず手を差し伸べる。すると、光が子猫の毛並みに柔らかく反射し、まるで宝石のように輝いた。

「かわいい……」

笑顔が自然とこぼれる。普段の私なら、ここまで心が動くことはなかっただろう。

能力――いや、衣装とアクセサリーが、私の存在を現実に映し出している。

だが、同時に胸の奥に微かな不安が芽生える。

「でも、これって本当に大丈夫なのかな……」

歩くたびに掌から光がこぼれ、通りすがりの人々の視線が集まる。

「あっ……!」

自分の意図しないところで、光が近くの花壇の花をひらひらと舞い上げた。小さな奇跡に、通行人は驚きの声を上げる。ユイの心臓はドキリと高鳴った。

「……私、見られてる」

見られることの恐怖と、嬉しさが交錯する。だが、胸の奥にはもうひとつ確かな感覚があった――

衣装の中の私が、確かに現実に出てきているという手応え。

その日、ユイは街中で何度も小さな奇跡を起こした。

光が花びらを舞わせ、小さな子供たちは驚きと歓声を上げる。SNSで動画を撮る人々も増え、画面の向こうでは拡散され始めていた。

「……やっぱり、私は変われるかもしれない」

夕暮れ、街の光が徐々に暖色に変わり、ユイはアクセサリーをそっと触った。

胸に秘めた決意と、小さな恐怖、そして何よりも確かな希望。

すべてが、仮面の向こうの私を現実に引き寄せていた。

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