第20話:冒険の試練と初めての危機
広間の奥に現れた扉を開くと、薄暗い洞窟が続いていた。
「……ここを進むのね」
ユイは掌に光を宿し、慎重に一歩を踏み出す。衣装の布が柔らかく光り、身体の動きが軽くなる感覚が頼もしい。
しかし、洞窟の中は予想以上に不安定だった。天井の岩がところどころ崩れ、地面は滑りやすい。掌の光を意識しながら進むが、恐怖が心に影を落とす。
「気をつけて……!」
ミナの声に応え、ユイは光を小さく制御し、足元の岩を照らす。
突然、地鳴りが響き、洞窟の奥から巨大な影が現れた。古代の魔獣のような姿で、目から赤い光が放たれる。
「うわっ……!」
恐怖と驚きで掌の光が暴走し、岩や小石が宙に浮く。周囲が光で揺れる中、ユイの胸は締め付けられるように痛む。
「ユイ、落ち着いて!」
レオンが冷静に声をかける。ミナも手を握り、支える。
「私たちがいる。だから、大丈夫!」
ユイは深呼吸をし、光を掌の中に取り戻す。恐怖と戦いながらも、昨日の覚醒で得た力の感覚が少しずつ戻ってくる。
掌の光を一点に集中させ、岩や魔獣に微かに反応させる。魔獣は驚き、目を細め、動きを止めた。ユイの力は、まだ完全ではないが、制御できることを証明していた。
「……できた」
胸の奥に達成感が広がる。恐怖に押し潰されず、仲間とともに初めての危機を乗り越えた瞬間だった。
洞窟の奥には、さらに強い光を放つ紋章が見え隠れする。巻物の指し示す次の目的地――未知の世界の試練は、まだ始まったばかりだった。




