第18話:巻物の秘密と力の覚醒
地下室の薄暗い空気の中、ユイは巻物を前に膝をついた。
光の紋章が掌に反応し、微かに指先を温める。胸の奥がざわつく――恐怖と期待、両方の感情が同時に押し寄せる。
「……いくよ」
小さくつぶやき、ユイは紋章に手を重ねる。すると、巻物の文字が一斉に光を帯び、掌に流れ込むような感覚が走った。
眩い光に包まれ、ユイはその場に座り込む。心臓の鼓動が速まり、胸が締め付けられる。掌から零れる光は制御できず、地下室の壁に反射して揺れる。
「怖い……でも……行かなくちゃ」
光の中、ユイの意識はふわりと宙に浮き、視界が非日常の世界に変わる。昨日までの街、今日までの自分が、まるで幻想のように感じられた。
紋章が指先で跳ねると、ユイの衣装に微細な変化が現れる。布が柔らかく光り、身体が軽くなる感覚――昨日までの力よりもさらに深く、自分の力が自分自身に馴染む瞬間だった。
「……これが、私の力の次の段階……」
しかし、光の中で不意に恐怖が襲う。掌に残る力が自分の感情を映し出し、制御できない感覚に心が揺れる。
「や、やっぱり怖い……!」
ミナとレオンの声が遠くで響く。
「ユイ、落ち着いて!」
「大丈夫だ、私たちがいる」
その声に引かれ、ユイは少しずつ光を掌の中に取り戻す。恐怖と希望、力と自分自身――すべてを受け入れた瞬間、掌から零れる光は安定し、衣装に新たな輝きが宿った。
「……できた……」
胸に小さな達成感と、まだ消えぬ恐怖。力の覚醒は、喜びと不安を同時に与えるものだった。
ユイは深呼吸し、巻物をそっと閉じる。これが、自分と力、そして仲間たちと歩む未来への第一歩だと理解した。
「私、もっと強くなる。怖くても、前に進む」
光が静かに揺れる地下室で、ユイの決意は新たな輝きを放っていた――物語は、ここからさらに加速していくのだった。




