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第13話:衣装なし挑戦

朝の光が差し込む部屋で、ユイは衣装を机の上に置いた。

「……今日は、衣装なしで挑戦してみる」

掌から光も、ローブの魔法効果もない。ただの自分、仮面も衣装もない自分。胸の奥がざわつき、恐怖と不安が押し寄せる。

「大丈夫、私なら……」

小さくつぶやく声が、部屋の静けさに溶けていく。

街に出ると、目に入るのは昨日までのような光や奇跡ではない、ありのままの自分自身。人々の視線、雑踏の音、通りすがりの会話。すべてがリアルで、否応なく心を刺激する。

最初のうちは歩くことすらぎこちなく、心臓が跳ねる。

「……やっぱり、怖い」

しかし、ふと目に入った子供の笑顔に勇気をもらう。昨日のように光はなくても、自分の笑顔や行動で、人を少しだけ喜ばせることはできる。

公園で、小さな子猫が道に迷って鳴いていた。衣装も光もないユイは、慎重に近づき、腕で抱き上げる。

「大丈夫、怖くないよ」

子供の声や通行人の優しい視線が、心に染みる。衣装がなくても、自分自身で世界に影響を与えられる――その手応えが、胸を熱くした。

夕暮れ、アパートに戻ったユイは、深く息を吐きながら窓から街を見下ろす。

掌に光はなくても、心の中には確かな力が芽生えていた。自分自身で世界を動かす感覚。恐怖を乗り越えた小さな成功。

「……私、少しだけ強くなれたかもしれない」

握りしめたアクセサリーは、そっと揺れ、淡い光を反射する。

衣装なしの挑戦は、ユイにとって初めての本物の自信を与える、涙腺崩壊の瞬間だった――そして、次の試練への序章でもあった。

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