第11話:孤独感の深まり
雨の午後、ユイはアパートのベランダに立ち、濡れた街を見下ろしていた。
掌から零れる光はなく、昨日の暴走の記憶だけが胸を締め付ける。
「……私、やっぱり、まだ力を制御できない」
部屋の中は静かすぎて、心の孤独が増幅される。SNSでは昨日の動画が拡散され、賛辞と批判が入り混じっていた。
褒める声も、批判も、すべて遠くで聞こえるような気がする。ユイはそのどちらにも触れられず、心の中でひとりで揺れていた。
ドアがノックされ、ミナが傘をさして入ってきた。
「ユイ、来ちゃった…」
「ミナ……」
小さくつぶやく声に、胸の奥が温かくなる。だが、同時に涙がこぼれそうになる。
「昨日のこと…怖かったの。私は…制御できなくて……」
ミナは無言でユイの肩を抱く。
「大丈夫だよ。怖かったのは当然だよ。私、ずっとそばにいるから」
その言葉に、ユイは涙をこぼした。感情が押し寄せ、心の壁が崩れる瞬間だった。掌の光はないのに、心の中で光が揺れているように感じる。
「……ありがとう、ミナ」
しかし、心の片隅では嫉妬や不安も消えない。
ライバルのSNS投稿、街中で見られる視線、思い通りにならない力――すべてが重なり、孤独感を増幅させる。
ユイは窓から外を見つめる。雨の街は静かで、光が水たまりに反射して揺れていた。
「……でも、負けたくない」
胸の奥で決意が少しずつ固まる。孤独感に押し潰されそうになりながらも、ミナの友情が光となり、希望の一筋となった。
その夜、ユイは枕を抱え、静かに目を閉じる。
掌の光はなくても、心の中で輝くものがある――それが、今日の彼女に残された唯一の希望だった。




