放課後の、秘密
放課後の教室は、ほとんどの生徒が帰り、静まり返っていた。
星川渚は机に肘をつき、窓の外の夕焼けをぼんやり眺める。
「今日も一日、なんか早かったなぁ…」
金髪をかき上げながら、ピンクネイルをチラッと見る。光を反射して、ちょっと照れくさい気分になる。
その時、背後から声がした。
「渚、まだおるんか?」
振り返ると、悠真が立っていた。放課後に一人で残るなんて珍しい、という顔で。
「なんであんたまでここおるん…?」
渚はちょっと怒ったように岡山弁で言う。でも、心臓はドキドキして、顔が熱くなる。
「偶然じゃけぇ…」悠真も少し照れながら答える。
二人は自然と屋上へ向かうことになった。
風が金髪を揺らし、夕焼けが校舎を赤く染める。倉敷らしい風景が、二人の時間を特別にする。
屋上で向かい合って座る渚。
「…あんたとおると、なんか落ち着くんよな」
素直に出た言葉に、渚自身もびっくりする。ギャルの明るさの裏に隠していた純情な気持ちが、自然に出てしまったのだ。
悠真は少し笑い、少し驚いたように言う。
「そ、そうか…俺も、渚とおると楽しい気がする」
渚の胸の中で、小さなドキドキがはじける。
「…うち、ほんまにあんたのこと、好きかもしれん」
小声でつぶやく渚。岡山弁が自然に混ざり、心の中での告白のようになっている。
風が二人の間をそっと吹き抜ける。
夕焼けの光が、渚の金髪をさらに輝かせ、悠真の黒髪にも赤い光を映す。
「これ…秘密じゃけど、うち…あんたのこと、ずっと見ときたいんよ」
ギャルで派手な自分が、純情な告白をする瞬間――
それは、二人の距離が少しずつ縮まる、大事な放課後の秘密だった。




