文化祭当日
文化祭当日。校舎は生徒たちの笑い声や呼び込みの声であふれ、どこか浮き足立っとった。
美咲は教室で準備の最終チェックをして、心臓が少し早鐘のように打っとる。
「よし、これで大丈夫かな…」
紙花や飾りがきれいに整い、クラスメイトの笑顔も見える。
けど、胸の奥では、悠真と里奈のことがちらちら気になって仕方なかった。
体育館では悠真がステージ裏の最終確認。
里奈は隣で手伝いながら、時々照れたように笑う。
「悠真くん、ライトの位置、ここでええん?」
「おう、ばっちりじゃ」
その笑顔に、里奈の心がほんの少し跳ねる。
──その頃、美咲は廊下を通る度に、二人のやり取りを遠くから見ていた。
胸がぎゅっとなる。
でも、目の前の準備をやめるわけにもいかん。
放課後が近づくにつれ、教室や廊下はさらに人で溢れ始める。
三人の視線は、何度もすれ違う。
それぞれの心の中で、「悠真くんはどっちを見よるんやろ」と、問い続ける。
その瞬間、里奈が舞台に置いた道具に手を伸ばして転びそうになり、悠真がとっさに支える。
「わっ、ありがとう…!」
「ほれ、手を離すなよ」
その触れた手の温もりで、二人の距離は一気に縮まった。
だが、偶然、美咲がその光景を目撃してしまう。
「……やっぱり……」
胸がざわつき、涙がほんの少しだけ頬を伝う。
けど、彼女は深呼吸して、微笑もうとした。
「よし、うちは、笑顔でおるけぇ」
文化祭の喧騒の中で、三人の想いは
まだ完全には交わらず、
それぞれの胸の中で揺れながら、次の瞬間を待っとった。




