胸のざわめきと、放課後の予感♡
放課後の空は、夏の名残をほんの少しだけ残していた。
赤く染まる校舎の窓が、どこか切なく光っとる。
美咲は机の上に並べた紙花を見つめながら、深く息を吐いた。
「……もう、ほんまにええ加減にせぇって感じやな」
誰に言うでもなく、ひとりごとみたいに。
「なにが?」
ドアの向こうから顔を出したのは、美月だった。
「また悠真と里奈のこと、考えよったんじゃろ」
「べ、別に……」
「はいはい、またそれ」
美月はため息まじりに笑って、美咲の隣に腰を下ろした。
「なぁ、美咲」
「ん?」
「うち、正直ちょっと見とれたで。あの二人、ええ感じじゃった」
「……見たん?」
「見た見た。悠真が里奈支えて、手つないどった」
「……そっか」
美咲は笑おうとしたけど、
その声は少し震えとった。
「でもな、美咲。うち思うんよ」
「なにが?」
「悠真の“ほんまの笑顔”、あんたとおる時のほうが、柔らかい」
「……うそじゃ」
「ほんま。うちはちゃんと見とるけぇ」
美咲はうつむいた。
美月の言葉が胸の奥をあたためるようで、でも同時に痛くもあった。
「……でも、もう遅いかもしれん」
「遅いかどうかは、あんたが決めることじゃろ」
窓の外では、運動部の掛け声が響く。
夕焼けが、二人の影を長く伸ばしていた。
――そのころ、体育館裏では。
悠真は一人、ベンチに腰かけておった。
スマホを見つめながら、溜め息をつく。
「……あかん、わし、なにしよんじゃろ」
画面には、美咲との過去の写真。
夏祭りの日、屋台の灯りの下で笑っとる彼女の横顔。
(なんで、こんなにも忘れられんのやろ)
そこへ、里奈が飲み物を持って現れる。
「悠真くん、おつかれさま。はい、スポドリ」
「おう、ありがとう」
「…ねぇ、悠真くん」
「ん?」
「このあと、少しだけ話せる?」
「……ええよ」
里奈の瞳は、夕陽に照らされて真剣そのもの。
その表情に、悠真の胸がざわつく。
その瞬間、
校舎の窓から見つめていた美咲と、
里奈の目が――ほんの一瞬、交わった。
風が吹き抜け、ポスターの端がはらりと揺れる。
静かな校庭の片隅で、
三人の想いは、また少しずつずれていった。




