文化祭準備
秋の空はどこか高く、風がひやりと冷たい。
校舎の廊下には色とりどりのポスターが並び、教室のあちこちで笑い声が響いとった。
文化祭の準備期間。
けど――美咲の胸は、少しだけ重たかった。
「悠真、今年も実行委員しよるんじゃろ?」
「おう。なんかまた押しつけられてもうてな」
悠真は笑いながら後頭部をかいた。
その笑顔はいつも通り優しいのに、どこか遠い。
美咲は視線を落とし、机の上の装飾用紙をぎゅっと握る。
「そっか。…がんばりぃよ」
「おう、美咲もな」
それだけ言葉を交わして、二人の会話は途切れた。
廊下の向こうでは、里奈が悠真に声をかけとる。
「悠真くん、ポスター貼るの手伝ってくれる?」
「ああ、ええで」
その光景が、胸の奥でちくりと刺さる。
──“うちは、もう前を向くって決めたんじゃろ?”
そう自分に言い聞かせながらも、目は自然と二人を追ってしまう。
美月が隣で苦笑いを浮かべた。
「ほら、そんな顔すな。あんたが泣いたらポスターまで湿気るで」
「…泣いとらんし」
「泣いとるわ。ほれ、鼻赤い」
「うっさい」
軽口を交わすその声の奥に、
美咲の胸の痛みがじわりとにじむ。
放課後、教室に残った美咲は飾りつけのリボンを黙々と結んどった。
窓の外には、夕陽の中を歩く悠真と里奈の姿。
笑い合いながら肩を並べる二人。
その影が、ゆっくりと長く伸びていく。
――どうしてやろ。
“好き”って言葉を飲み込むたびに、
心の奥が少しずつ擦り切れていく気がした。
けど、逃げたくなかった。
だから、美咲はぎゅっと拳を握る。
「よし。うちも負けとれん」
その声は小さかったけど、
確かに前を向こうとする決意の音やった。




