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晴れの国で、恋をした  作者: 櫻木サヱ
すれ違う想いと、文化祭の奇跡

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77/83

文化祭準備

秋の空はどこか高く、風がひやりと冷たい。

校舎の廊下には色とりどりのポスターが並び、教室のあちこちで笑い声が響いとった。

文化祭の準備期間。

けど――美咲の胸は、少しだけ重たかった。


「悠真、今年も実行委員しよるんじゃろ?」

「おう。なんかまた押しつけられてもうてな」

悠真は笑いながら後頭部をかいた。

その笑顔はいつも通り優しいのに、どこか遠い。


美咲は視線を落とし、机の上の装飾用紙をぎゅっと握る。

「そっか。…がんばりぃよ」

「おう、美咲もな」


それだけ言葉を交わして、二人の会話は途切れた。

廊下の向こうでは、里奈が悠真に声をかけとる。

「悠真くん、ポスター貼るの手伝ってくれる?」

「ああ、ええで」

その光景が、胸の奥でちくりと刺さる。


──“うちは、もう前を向くって決めたんじゃろ?”

そう自分に言い聞かせながらも、目は自然と二人を追ってしまう。


美月が隣で苦笑いを浮かべた。

「ほら、そんな顔すな。あんたが泣いたらポスターまで湿気るで」

「…泣いとらんし」

「泣いとるわ。ほれ、鼻赤い」

「うっさい」


軽口を交わすその声の奥に、

美咲の胸の痛みがじわりとにじむ。


放課後、教室に残った美咲は飾りつけのリボンを黙々と結んどった。

窓の外には、夕陽の中を歩く悠真と里奈の姿。

笑い合いながら肩を並べる二人。

その影が、ゆっくりと長く伸びていく。


――どうしてやろ。

“好き”って言葉を飲み込むたびに、

心の奥が少しずつ擦り切れていく気がした。


けど、逃げたくなかった。

だから、美咲はぎゅっと拳を握る。


「よし。うちも負けとれん」


その声は小さかったけど、

確かに前を向こうとする決意の音やった。


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