里奈の決意
夜の部屋。
机の上のノートを開いたまま、里奈はぼんやりと天井を見上げとった。
窓の外には虫の声。
心の中では、あの夕暮れの声が何度もよみがえる。
──「悠真のこと、ずっと好きじゃったんよ」
胸がぎゅっと痛くなって、思わずノートを閉じた。
「……なんで、わし、泣きそうになっとるんじゃろ」
里奈は両手で顔を覆って、深呼吸をする。
美咲の気持ちは本物。
悠真の優しさも、ずっと見てきた。
そして自分の気持ちも、もう誤魔化せん。
(わし……悠真くんのこと、ほんまに好きなんじゃ)
涙が一粒、ぽとりと落ちてノートを濡らした。
だけど、次の瞬間、里奈はきゅっと拳を握る。
「……でも、美咲ちゃんの涙は、見とうないんよ」
友情を壊すような恋はしたくない。
それでも、自分の気持ちに嘘をつくのも、もうやめたい。
その夜、里奈はペンを手に取り、ノートに一行だけ書いた。
『好きになってよかったと思えるように、わし、強うなる。』
その文字を見て、少し笑った。
(たとえこの恋が叶わんでも、ちゃんと自分の想いは持っときたい)
月明かりがカーテンの隙間から差し込んで、
里奈の横顔をやさしく照らす。
その光の中で、彼女の決意は静かに固まっていった。
「明日、美咲ちゃんに……ちゃんと話そう」
──それが、彼女にとっての“初めての勇気”じゃった。




