聞いてしもうた想い
放課後の河川敷。
夕暮れの光が少しずつ薄れて、川風が冷たく感じる時間。
里奈は、ふと足を止めた。
茂みの向こうから、美咲と悠真の声が聞こえてくる。
最初はただ話しとるだけじゃと思った。
けど──次の瞬間、心臓が止まるような言葉が耳に入った。
「……悠真のこと、ずっと好きじゃったんよ」
美咲の声。震えと、勇気と、切なさの混ざった声だった。
里奈の体がピクリと固まる。
夕風が髪を揺らす音さえ遠のいて、鼓動だけが響いた。
(……美咲ちゃん……やっぱり……悠真くんのこと……)
その後に続いた悠真の声は、優しくて、でも苦しそうで。
「……わし、知っとった。けど、今はまだ誰も選べんのじゃ」
その言葉が、里奈の胸に深く刺さった。
(わしも……同じなんよ……悠真くん。
でも、美咲ちゃんの気持ちを聞いてもうたら……
もう、わしは動けんじゃろ……)
目の奥がじんわり熱くなって、視界が滲む。
涙をこらえて、川を見つめながら小さく呟いた。
「……なんで、こんな気持ちになるんじゃろ……」
美月が少し離れた場所からその様子を見て、静かに溜息をつく。
「青春っちゅうのは、ほんま、もどかしいもんじゃなあ……」
夕陽が完全に沈み、空は茜色から藍色に変わっていく。
里奈は最後に一度だけ、茂みの向こうを見た。
悠真と美咲の影が、重なりそうで重ならん距離に立っとった。
その光景が胸に焼きついて、離れんかった。
(わし、もう少しだけ頑張ってみようか……
それとも、この気持ちは……しまっといた方がええんかな……)
川面に映る自分の顔を見ながら、
里奈は小さく笑った。けど、目の端には光る雫がひとつ落ちた。
その夜、誰も知らんところで、三人の想いが静かに揺れ続けた。




