本音と夕暮れ
放課後、川沿いの土手道。
夕陽が赤く世界を染める中、美咲と悠真は並んで歩いとった。
「……なあ、悠真。最近、里奈ちゃんとよう一緒におるな」
美咲が何気なく言ったつもりの言葉。けど、声の奥には少しだけ震えがあった。
悠真はポケットに手を突っ込み、曖昧に笑う。
「まあな。あいつ、頑張り屋じゃけぇ。なんか放っとけんのんよ」
その言葉に、美咲の胸がズキッと痛んだ。
(……やっぱり、里奈ちゃんのこと、特別なんじゃな……)
少し沈黙が流れる。
川のせせらぎと、風が草を揺らす音だけが響いとる。
「なあ、美咲」
悠真の低い声が、その静寂を破った。
「おまえ、最近ちょっと無理しとるじゃろ。わし、気づいとる」
美咲は一瞬、目を見開いて、それから小さく笑った。
「……わし、バレとったんじゃな」
「そりゃあ、わしには分かるよ」
悠真はやさしく笑って、少しだけ彼女の肩に触れた。
その瞬間、美咲の中で押さえつけてた感情が、ぷつんと切れた。
「……悠真のこと、ずっと好きじゃったんよ」
一瞬、風が止まったように感じた。
悠真の手が止まり、視線が交差する。
美咲の頬には、夕陽が差して赤く染まっとった。
「……わし、知っとった」
悠真の声はかすかに震えていた。
「でもな、美咲……わし、今はまだ……誰のこともはっきり選べん」
美咲は俯いて、笑いながら小さく呟く。
「分かっとるよ。わしも、もう無理して笑うんやめるけぇ」
そのやりとりを、少し離れた場所で――
里奈が、偶然耳にしていた。
風が吹いて、彼女の髪が揺れる。
(……美咲ちゃん、やっぱり……悠真くんのこと……)
里奈の胸にもまた、静かな痛みが広がっていった。
誰も悪くないのに、なぜか切なくて苦しい。
三人の想いが、またひとつ交錯した、秋の夕暮れだった――。




