ばか!ドキドキしたじゃろ!
放課後の教室は、いつもより静かだった。
クラスメイトたちはまだ掃除や部活で残っているが、渚は自分の机で荷物をまとめていた。
「今日もふつーじゃのに…なんで心臓バクバクするんじゃろ」
渚は独り言をつぶやく。目の前にいるのは、悠真ではないのに、思い出すだけで胸がぎゅっと締め付けられる。
そのとき、背後から声が聞こえた。
「おい、渚!」
振り返ると、悠真が教室にいた。掃除道具を持ちながら、少し困った顔をしている。
「ば、ばか…何しょーるん?」渚は慌てて言う。
「え、掃除手伝おうと思って…」
悠真は真面目に答えるが、その真剣な表情に渚は思わず心臓が跳ねる。
「…でも、あんたが来ると、なんか恥ずかしいんよな」
思わず口に出してしまった自分の言葉に、渚は真っ赤になる。
悠真も少し微笑み、「そ、そうか…」と小さな声で返す。
掃除をしながら、二人の距離は自然と近づく。
「この子、やっぱり…面白いな」
悠真は心の中でつぶやき、渚の明るさと純情さに惹かれている自分に気づく。
渚もまた、悠真と同じ空間にいるだけで胸がぎゅーっとなるのを感じていた。
「うち…なんでこんなにドキドキするんじゃろ…」
ギャルで派手な見た目の自分が、恋に奥手で純情な一面を見せてしまっていることに、少し戸惑う。
掃除が終わり、帰る時間になった。
二人は校門まで一緒に歩くことになった。
「じゃあ、また明日な」悠真が少し照れた様子で言う。
「うん…またな」渚も自然に答えるが、心の中は嵐のようにドキドキしていた。
夕暮れの倉敷の街は、金色に染まっていた。
渚の金髪も夕日に映えて輝く。
「恋って…こんなに胸がぎゅーってなるんじゃな」
派手なギャルでも、純情な心は隠せない。
今日の小さな事件が、二人の距離を少しだけ近づけた――そんな1日だった。




