愛のビンタ
夕暮れの教室。
美咲は窓際に座り、沈みかけた夕陽を見つめていた。
胸の奥にはまだ悠真への想いが残っている。
(……やっぱり好き……でも……諦めた方がええんかな……)
心の中で小さな葛藤が渦巻き、手はぎゅっと握りしめられていた。
その瞬間、美月が静かに教室に入ってきた。
「美咲!あんた、何しとるんよ!」
強い口調に美咲は驚き、ハッと顔を上げる。
「美月……?」
美月の目は真剣そのもので、友情とライバル心が混ざった光を放っていた。
「何ぼ悩んどるだけで立ち止まっとんの!悠真のこと諦めるって、それ……ほんまにあんたのやり方か!?」
美月はそう言うと、美咲の肩を軽く叩いた。
その拍子に美咲は一瞬息をのむ。
「……ごめん……美月……でも……」
美咲は目を伏せて言い訳しそうになるが、美月は容赦しない。
「ごめんじゃない!諦めるんじゃなくて、戦わんとあかんじゃろ!悠真への想いがあるんじゃったら、今動かんでいつ動くんよ!」
そして勢い余って、軽くだけどビンタをしてしまう。
「……えっ!?」
美咲はびっくりして手で頬を押さえる。
でもその瞬間、胸の奥が熱くなるのを感じた。
美月は少し落ち着きを取り戻し、深く息をつく。
「分かっとる……私も辛い。でも、あんたにはあんたの気持ちがあるじゃろ?だから……ちゃんと戦えって言うとるんよ」
美咲は涙ぐみながらも、少し微笑む。
「美月……ありがとう……」
胸の奥で小さな炎が再び燃え上がる。
(……私、やっぱり負けられん……悠真……諦めん……!)
夕陽は教室をオレンジ色に染め、二人の影を長く伸ばす。
友情の厳しさと温かさ、切なさと胸キュンが交錯する瞬間――
美咲の心は決意と共に少しずつ強くなっていった。
美月は肩越しに微笑み、そっと美咲を励ます。
(……あんた、まだまだ強くなれる……私がついとるけぇな……)
二人の絆は、甘酸っぱく、胸が熱くなる友情の形として、夕陽の中に鮮やかに刻まれていた――。




