強気のKiss
文化祭の片付けもほぼ終わり、教室には静けさが戻っていた。
美咲は机の端に座り、深呼吸を繰り返す。
(……もう、勇気出さな……悠真に、ちゃんと気持ち伝えな……!)
胸はドキドキ。手は汗で少し湿っている。
美咲はゆっくり立ち上がり、悠真の方に歩み寄る。
「ね、ねぇ悠真……ちょっとだけ……話、しよ……?」
小さな声だが、決意がこもっていた。
悠真は振り向き、いつもの無邪気な笑顔。
「お、なんじゃ? どうしたん、美咲」
美咲は心臓が飛び出そうになりながらも、少しずつ近づく。
「その……あの……その、手……握りたいん……」
勇気を出して手を差し出す。
悠真は一瞬目を細め、無邪気な笑みを浮かべながらその手に触れる。
しかし、美咲は緊張で思わず手を払い除ける。
「……ご、ごめん……っ!」
その瞬間、悠真はすぐに美咲の動きを感じ取り、やけっぱちとも思える素早い動きで彼女を抱き締めた。
「……なんでや、怖がらんでええんよ!」
美咲は驚きとドキドキで、体が固まる。
胸の奥がぎゅっと締め付けられ、心臓が破裂しそうになる。
(……悠真……!近い……っ!)
悠真は美咲の額にそっと唇を寄せ、おでこに優しくキスをする。
「……これで少しは安心するやろ?」
その低く、あたたかい声に、美咲は息が詰まりそうになる。
美咲の頬は真っ赤で、胸の奥の炎が一気に燃え上がる。
(……うそ……あんた……ほんまに……っ!)
悠真は抱き締めたまま、微笑みながら美咲の顔を覗き込む。
「……美咲、わしはお前のこと、ちょっとは……好きなんよ」
その言葉に、美咲の心臓は一瞬止まり、胸が熱くなる。
美咲は小さく頷き、目に涙が浮かぶ。
「……わたしも……悠真……ほんまに好き……っ!」
その瞬間、二人の間には甘くて切ない空気が広がる。
教室の窓から差し込む夕陽が、二人の影を長く伸ばし、心の奥の熱を照らしていた。
美月も廊下の向こうからその様子を目撃し、口をぎゅっと結ぶ。
(……やっぱり……悠真と美咲……か……)
ライバル心と焦燥が胸を占める。
でも美咲の胸は、悠真の抱擁とおでこキッスで完全に燃え上がり、
「もう、絶対あんたを振り向かせる……悠真……!」
と強く心に決意するのだった――。




