震える気持ち
文化祭の片付けも終わりに近づき、教室には疲れた空気とほのかな達成感が漂っていた。
美咲は少し離れた席で、まだ胸の高鳴りを押さえながら悠真の行動を見守っている。
その目の前で、悠真は里奈と一緒に机の整理をしていた。
「里奈、ここはこうしたほうがええかもな」
その声はいつもと同じ優しいトーン。
里奈は照れ笑いを浮かべながらも、嬉しそうに頷く。
（……悠真くん……やっぱり優しい……）
その自然な距離感に、里奈の胸は少しずつ高鳴る。
しかし、悠真の内心は少し複雑だった。
（……里奈はやっぱり好きじゃ……でも、美咲も……ちょっと気になるんよな……）
美咲の焦った顔や、ちょっと拗ねた仕草が頭をよぎる。
悠真は里奈の方を見つめながらも、ふと視線を上げる。
そこには、目をぎゅっと見開いて彼を見つめる美咲の姿があった。
（……あ、見とるな……ふふ、ちょっと焦っとる……かわいい）
その瞬間、悠真の胸がほんの少し熱くなる。
「よし、これで終わりか」
悠真は里奈に微笑みかける。
「お疲れさん、里奈。手伝ってくれてありがとうな」
里奈は顔を赤らめ、少し下を向く。
「う、うん……ありがとう、悠真くん」
その小さな声に、悠真は自然に腕を軽く伸ばし、里奈の肩に触れる。
美咲はその瞬間、胸がぎゅっと締め付けられる。
（……あんた……ほんまに里奈のこと……！でも……なんでちょっと気になるん……！？）
焦りと嫉妬、そして切なさが一気に押し寄せ、心臓が破裂しそうになる。
悠真は里奈の表情に安心しながらも、美咲の反応も気になっている。
（……美咲、あの顔……焦っとるな……ふふ、見とるのかわいい……）
無邪気に見せながらも、内心は少し揺れている。
里奈も悠真の優しさに心が揺れ、自然と顔が赤くなる。
（……あれ、私……なんでこんなにドキドキするんやろ……）
その瞬間、二人の距離感はほんの少し近づいたように感じた。
美咲は立ちすくみ、胸の奥が熱くなる。
（……悠真、あんた……里奈ばっかり優しい……でも……私も……！）
決意が心に芽生え、焦燥と熱が交錯する。
夕陽が教室に差し込み、三人の影が長く伸びる中で、悠真の心も少し揺れ動いた。
彼の目は里奈に向かいつつ、無意識に美咲の存在も意識している――。
この瞬間、三角関係の火花はさらに強く、甘酸っぱく、切なく燃え上がった――。
