故意のトキメキ
文化祭の装飾作業もほぼ終わり、教室の中は少し落ち着いた雰囲気。
美咲は、悠真の壁ドンのことを思い出して胸がまだドキドキしていた。
「よし、次はこれを飾ろうか」
悠真は里奈と一緒に、教室の壁にポスターを貼ろうとしていた。
里奈は少し不器用で、脚立の上でバランスを崩しそうになる。
「わっ……!」
その瞬間、里奈の身体がふわっと後ろに傾き、悠真はとっさに手を伸ばして支えた。
「大丈夫か!? しっかり持っとるけぇ!」
気づいたら、悠真の腕に里奈が抱きつく形になっていた。
「……っ……あ、ありがとう……悠真くん……」
里奈の頬が少し赤くなり、心臓が早鐘のように鳴る。
悠真も自然に里奈の背中を支えながら、微笑む。
「危なかったけぇな……でも、もう大丈夫や」
その瞬間、教室の入り口の方で美咲が立ち止まる。
(……えっ……今の……!?)
目の前の光景に、胸がぎゅっと締め付けられる。
悠真が里奈を抱き締めている――しかも、腕の中で里奈が少し身を寄せている。
美咲の心臓は跳ね上がり、息が苦しくなる。
(……なんで……あんた……!)
胸の奥が熱く、目の前が一瞬真っ赤に見えた。
悠真は自然に里奈を支えながらも、ちらりと美咲の方を見る。
(……見とるな……ふふ、焦っとる)
その視線が美咲の胸にぐさっと突き刺さる。
里奈も微妙に動揺していた。
(……悠真くん……なんか……すごく近い……)
抱き締められた体の温かさに、胸の奥がぎゅっとなる。
でも二人とも、事故だったことはわかっている。
美咲は目をそらせず、立ちすくむ。
胸の奥がもやもやして、動悸が止まらない。
(……悠真……あんた……里奈のこと……!)
嫉妬と焦燥、そして切なさが入り混じり、胸が張り裂けそうになる。
その時、微妙な沈黙を破るように悠真が里奈を軽く離す。
「……ほら、大丈夫やろ?」
里奈は照れ笑いを浮かべ、ちょっとだけ頬を赤らめる。
美咲はその距離感を見て、胸の奥で小さく火がついた。
(……やっぱり、あんた……優しいんじゃ……!でも……悔しい……っ!)
その焦燥と熱は、胸の中でさらに燃え上がる。
悠真は自然に微笑みながら、美咲の反応をチラリと確認する。
(……美咲、焦っとるな……ふふ、見とる顔、かわいい)
思わせぶりな態度は変わらず、でも確実に美咲の心を揺さぶる。
夕陽が教室の窓から差し込み、三人の影を長く伸ばす。
美咲の胸はぎゅうぎゅうに締め付けられ、焦燥と嫉妬でいっぱい。
でも同時に、決意も固くなる。
(……悠真、絶対に振り向かせてみせる……!)
その日、教室には甘酸っぱく、切なく、そして胸キュンの三角関係の火花が、確実に燃え上がっていた――。




