ギャルってなめんな!
朝の教室は、昨日と変わらずざわざわしていた。
「また派手じゃなぁ…」と小声で囁く子たちの視線も、渚にとっては日常の一部。
彼女は机に座り、ピンクネイルをちらっと見せて「ふん、気にすんな」と心の中でつぶやく。
隣に座る親友・愛理がくすっと笑った。
「渚、今日も気合入っとるなぁ」
「当たり前じゃん。うちらギャルは見た目命じゃけぇ!」
渚は髪をかき上げながら、得意げに答える。でも、心の奥では少しだけ落ち着かない気持ちもあった。
その視線の先に、悠真がいた。
黒髪をきちんと整え、落ち着いた顔でノートに向かう。都会から来た彼は、クラスの誰とも違う空気をまとっていた。
渚は小さく鼻で笑う。
「ふーん…まじめくんじゃの」
でも、その瞳には、知らぬ間に興味が芽生えていた。
昼休み、二人は偶然廊下で鉢合わせる。
「…あ、こんにちは」悠真がぎこちなく挨拶する。
「はぁ?別に挨拶せんでもよくない?」渚はつい強めに返す。
でも心の奥では、胸がちくちく痛むような感覚があった。自分でも驚くくらいドキドキしていたのだ。
教室では、周囲の生徒が二人をチラチラ見ている。
「都会もんとギャル、どうなるんじゃろ」
渚は少し恥ずかしくなり、髪をかき上げながら目を逸らす。
放課後、屋上に向かう渚。風が金髪を揺らし、ネイルが光を反射してキラキラ輝く。
悠真も偶然同じ屋上にいた。
「…なんでここにおるん?」
「偶然じゃけぇ」渚は少し照れながら答える。
二人の距離は自然と縮まる。悠真の真面目な目と、渚のギャルの顔の間に、なんだか特別な空気が流れる。
「…あんた、ほんまはどう思っとるん?」渚は心の中で問いかけるが、口には出せない。
愛理が横から小声でささやく。
「お前…悠真のこと意識しとるやろ?」
渚は赤面し、思わず否定する。
「ち、違うし!」
でも心は正直だった。悠真のことを考えると、胸がきゅんと締め付けられるのを感じる。
帰り道、岡山の街並みを歩きながら、渚は独り言をつぶやく。
「恋って…こんなにドキドキするもんなんじゃな…」
派手な見た目のギャルだけど、恋には超純情。
誰も知らない渚の一面が、少しずつ悠真に見え始めている。
そして、夕焼けに染まる倉敷の空の下、二人の距離はゆっくり、でも確実に縮まっていくのだった。




