3人での放課後作業
放課後の教室は、文化祭の準備で少しざわついていた。
美咲は悠真と並んでポスター作り。
そして美月も控えめに、でも確実に視線を合わせながら隣に座る。
悠真はお気楽に「二人とも、ありがとうな〜!」
その笑顔は、まだ何も気づいていない鈍感王。
美咲は心の中でため息。
(ほんま、気づかんのんじゃな……でも、負けん!)
彩香に教えられた通り、少しずつ距離を縮める作戦を実行。
「ここ、色どう思う?」
美咲はわざと悠真の近くに身を寄せ、肩がちょっと触れる位置でプリントを見せる。
悠真は無意識に「うん、いい感じ!」と答えるだけ。
美咲の胸はドキドキ。
(……なにこのもどかしさ……!)
横で美月も、負けじと自然に距離を詰める。
「この色、私もいいと思うよ」
さりげなく、美咲の注意を引くように話す美月。
微妙な牽制。
(……あいつ、やっぱり手ごわい……)
さらに、悠真がぽつりと他の女子の名前を出す。
「○○ちゃんも今日、文化祭準備手伝うらしい」
美咲の心はドキリ。
「……え、そ、そうなん?」
悠真は何も気にせず、にこにこ笑っているだけ。
(……まったく、鈍感すぎる……)
でも、焦りと悔しさの中で、少しずつ美咲は考える。
「ここは……あたしが本気で勝負するしかないんじゃな」
プリントを並べながら、二人のライバル(美咲と美月)の間で静かに火花が散る。
悠真は相変わらず何も知らない。
でもその無自覚さが、二人の心をさらに燃え上がらせる。
作業が一段落したとき、美咲は小さくため息をつく。
「ふぅ……これで少しは差を縮められたんかね?」
美月もにっこり笑う。
「まぁ、あんたもなかなかやるやん」
悠真は二人のやり取りを見ながら、
「二人とも、ほんま助かるわ〜!」
と相変わらず無邪気。
美咲の胸の奥で、じんわり熱いものが広がる。
(悠真……気づかんけど、あたしの気持ち、ちゃんと届くんじゃろか……)
夕暮れの校舎の窓に映る三人の影。
火花はまだ見えんけど、確実に燃え広がっている――。




