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晴れの国で、恋をした  作者: 櫻木サヱ
恋の始まり、方言まじり

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13/36

勇気、チョビっとだけ♡

翌朝の登校時間。

美咲は、いつもよりちょっと早めに家を出とった。

「……今日こそ、ちゃんと話すけぇ」


――そう。昨日、渡り廊下から見た光景。

悠真と、美月が並んで笑っとったあの場面が、ずっと頭に焼き付いて離れんのんよ。


(別に、付き合っとるとかじゃないし……)

(けど、なんで、あんなに楽しそうに……)


胸の奥が、キュッと締めつけられるように痛い。

ギャルは強くてキラキラしとる、ってみんな思っとる。

でもほんまは、美咲だって恋に関しては超初心者じゃけぇ。


「……なぁ、美咲」

横から彩香が追いついてきた。

「今日、勝負かけるつもりじゃろ?」


「うっ……ばれとるし」

「そりゃそうじゃ。昨日、めっちゃ顔に書いとったけぇな」


彩香はにやにやしながらも、ふっと表情を引き締めた。

「美月が悠真としゃべっとっても、ビビる必要ないで。あんたはあんたじゃろ?」


「……あいつ、キレイじゃし。なんか、悠真と並んだらお似合いに見えるんよ」


「はぁ〜〜〜〜〜〜〜……」

彩香はため息をついて、美咲の頭を軽くポンッと叩いた。

「そんなことで引いてどーすん。好きなら、ちょびっとでも前に出らにゃ勝てんのんじゃ」


その言葉が、胸の奥にスッと入った。

怖い。でも、ほんまは話したい。

ギャルだからじゃなく、“美咲”として向き合いたい。


* * *


放課後。

教室のドアを開けると、悠真と美月がまだ残っとった。

二人で、何やらプリントを見ながら話しとる。


(くぅぅぅ……またこのパターンかい……)


でも今日は、逃げんって決めとるんじゃ。


美咲は深呼吸をひとつ。

制服のスカートを軽く整えて、

「――なあ、悠真」


声をかけた。

教室の空気がピタッと止まったような気がした。


悠真がちょっと驚いたように顔を上げる。

「……美咲?」

「帰り、ちょっと……いっしょに帰らん?」


――言えた。

ほんの一言じゃけど、ちゃんと自分の気持ちを出せた。


美月が一瞬だけ目を見開いて、すぐに笑顔を作った。

「……あたし、ちょうど図書委員あるけぇ、先いっとっていいよ」

そう言って教室を出ていった。


(え……今の、譲ってくれたんじゃろか……? いや、そんな単純な話じゃないよな……)


悠真は少しだけ困ったように笑いながらも、

「……いいよ。駅までやろ?」


「うん!」


胸の中が、じんわりあったかくなる。

ちょっとの勇気で、景色がこんなに変わるなんて思わんかった。


* * *


下校途中の歩道で、並んで歩く二人。

道端の銀杏の木が、秋の色に染まりはじめとる。

美咲の指先が、ほんの少し震えてた。


でも――震えとるのは、怖いからじゃない。

きっと、うれしいから。


彩香(心の声)

「よっしゃ、美咲……その調子じゃ。恋はな、逃げんほうが勝ちなんよ」


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