友達の助言
昼休み、渡り廊下に吹き込む風は、秋の匂いが混じってた。
岡山の空は今日も青くて高い。だけど、美咲の心はなんだかモヤモヤ。
「なぁ彩香〜……あんた、恋愛ってどんな感じになったら“本気”になる思う?」
弁当をつつきながら、机に突っ伏す美咲。
あの夕焼けの日から、悠真のことが頭から離れんのんよ。
「なによ、いきなり」
「なんか……最近、アイツのこと見とる時間のが多いんよなぁ〜って。朝とか、放課後とか、ちょっとしたときとか……」
彩香はニヤッと笑った。
「それ、本気じゃろ。気づいてないだけで、完全に好きになっとる顔しとるもん」
「ちがっ……ちがうし!!」
「はいはい、そういう否定の仕方、恋する乙女の定番よなぁ〜♡」
彩香の言葉は冗談っぽいのに、不思議と胸に残った。
“本気”って、なんなんじゃろ。
ただドキドキしとるだけじゃ、足りん気がする。
「けどな、美咲。あんた、悠真としゃべるとき、めっちゃわかりやすいで?」
「え?」
「目ぇ、めちゃくちゃキラッキラしとるもん。あれ、バレとるって」
「……うそじゃろ……」
美咲は思わず顔を覆った。
たしかに最近、わざと肩をぶつけたり、同じ方向に歩いたりしてる。
……完全に好きバレの行動やん。
「けどさ」
彩香が少し真面目な顔になった。
「悠真って、ほんまに真面目な子じゃん? あーいうタイプって、軽いノリとか駆け引きだけじゃ落ちんよ?」
「……うん」
「だからさ、あんたも“ギャル”だけじゃなくて、“本音”見せたらええんじゃね?」
「本音……」
「うん。遊びとか興味本位やのうて、ちゃんと“好き”って顔したら……たぶん、アイツも気づくよ」
美咲はスマホの画面に映る自分を見た。
まつげも髪もネイルも完璧。でも、その奥にある“ほんまの気持ち”は、まだ誰にも見せとらん。
「……ちょっと、怖いな」
「そりゃ怖いよ。恋って、怖いもん」
彩香の言葉は、やけに優しかった。
夕方、教室に戻る途中で、廊下の向こうに悠真の姿を見つける。
「……見えとるんじゃろ、わたしのこと」
彼の背中を見つめながら、美咲の胸の奥で、ちいさな勇気がふくらんだ。
彩香(心の声)
「がんばりんさいよ、美咲……。恋は、ギャルの勝負どころじゃけぇな」




