放課後の寄り道
授業が終わり、チャイムが鳴ると、廊下には部活へ向かう生徒たちの声が響いた。
渚はいつものように廊下に立ち、帰ろうかどうか迷っていた。
そんなとき、悠真が教室から顔を出す。
「渚、今日…一緒に帰らん?」
その一言に、渚の心臓がドクンと鳴った。
「え、えぇ?うちと?」
「うん。別に、ちょっと寄り道したいだけじゃけぇ」
悠真はいつも通りの穏やかな声で笑う。その笑顔が、渚の胸をじんわり温かくした。
二人は並んで校門を出る。夕方の風が気持ちよく吹いて、金髪がふわっと揺れる。
道沿いには地元の商店街。おばちゃんたちの元気な声と、たこ焼きの香りが漂う。
「なぁ、ここら辺来ると、なんか落ち着くんよな」悠真がぽつりとつぶやく。
「わかるー!ここ、昔からよう来とったもん。うち、小さい頃からこのたこ焼き屋の匂い、大好きなんよ」
渚は無邪気に笑う。その笑顔を見た悠真も、ふっと優しく笑った。
二人はたこ焼きを買って、川沿いのベンチに座る。
「熱っ!…あははっ、舌ヤケドするかと思った!」渚が大きな声で笑う。
「渚、ほんま子どもみたいじゃな」悠真がからかうように言う。
「うっさいなぁ!そんなん言うあんたの顔も笑っとるじゃろ!」
岡山弁で元気に返す渚。
夕暮れの空がオレンジ色に染まるなか、二人の笑い声が川に溶けていく。
渚はふと、悠真の横顔を見つめた。
「…こうやって一緒におると、ほんまに時間が早いな」
「俺もそう思う」悠真が優しく返す。
その言葉に、渚の心臓がまたドクンと鳴る。
「うち…やっぱり、あんたのこと好きになっとるんじゃろか…」
心の中でつぶやいた渚の頬は、夕陽のせいだけじゃなく、ほんのり赤く染まっていた。




