教室のざわめき
次の日の教室は、いつも通りざわざわしていた。
机に座る渚の周りで、クラスメイトたちの小声が飛び交う。
「ねぇねぇ、昨日の屋上、見たんじゃけど…」
「渚と悠真、付き合っとるんかもな」
渚の耳にその声が届いた瞬間、顔が真っ赤になる。
「はぁ!?なんじゃそりゃ!うちと悠真が!?ば、ばかじゃな!」
岡山弁で大声を出してしまうが、心臓はドキドキ。
周りの子たちは、ちょっと驚いた様子で渚を見つめる。
「…うちはそんなこと、全然ないし!」
でも、その声の奥に、ほんの少しの恥ずかしさと嬉しさが混ざっていた。
愛理が小さく笑いながら横からささやく。
「渚…赤くなっとるやん。やっぱ意識しとるじゃろ」
「ち、違うし!ほんまに違うけぇ!」
渚は必死に否定するが、心の奥では悠真のことを考えると胸がぎゅーっとなるのを感じる。
授業が始まっても、渚の心は落ち着かない。
ノートに書く文字がふわふわして、悠真の姿をちらちらと見てしまう。
「あぁ…うち、完全に恋しとるんかも…」
思わず小さく心の中でつぶやく。
昼休み、友達にからかわれることもあった。
「ねぇ渚、悠真のこと考えとったやろ?」
「うるさいわ!ばか!」
岡山弁で返す渚は怒りながらも、内心はドキドキと喜んでいた。
放課後、渚は心の中で自分に言い聞かせる。
「クラスのことは気にせん…大事なんは、あんたとおるときの気持ちじゃ」
ギャルで派手な自分の顔の裏に隠れた、純情な恋心。
それを少しずつ、悠真に見せてもいいかもと思い始めていた。




