表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/22

オレオレ!オレが主役の回!

(女子高生目線)


 学校が終わり、塾へ行き、塾が終わって階段を降りてくると、塾のビルの目の前には彼が立っていた。私のことを待っていたんだろうか?

「オイッス!」

「え?……………えと?」

 それは、今日の朝に花屋で出会った男の人だった。私に向かって手を振ってきたので、やっぱり私のことを待っていたみたいだ。

「たしか……ヨコ…」

「シマだよ!何にもかすってないじゃんか」

 あまりにも興味がなかったので、名前を覚えていなかった私のことを怒る感じでもなく、笑い飛ばしてくれた。

 …優しそうな子犬のような人だなという印象だ。

「さっ、車に乗って」

 私は、シマさんに腕をひっぱられて、車道に停められていた黒い車の助手席に案内される。

「え、でも」

「いいから、いいから」

 私は、何故か加賀さんの知り合いと思われる人の車に押し込められた。

「家まで送って行くよ。どのへん?」

「あの……」

「安心して、少し話がしたいだけだから」

 私が、明らかに警戒しているような顔をしていたんだと思う。むこうもすごくにこやかに話しかけてくれているけれど、強引に車に乗せられてしまったので、どうしたらいいのかわからない。

 かといって、加賀さんに連絡できる手段はないので、送ってもらう以外にはないのかな…。

「えと…その………大宮です…」

「よしっ大宮駅でいい?ここから40分くらいかぁー楽しいドライブになりそう♫」

 シマさんは、車のカーナビに大宮駅を設定している。本当に送ってくれるみたいだ。

「………………。」

 車はナビの案内に従って発進する。

「そんなに硬くならないでよ。誘拐とかじゃマジでないからさ」

「え、あ……はぁ」

 誘拐しない人が、誘拐という言葉を使ったりするのかな?という気持ちがないわけでもないが、シートベルトをつけて車が発進してしまったのだから、自分も覚悟を決めるしかない。

「カガミンのことが好きなんでしょ?」

「え?!えと……………………はい…」

「態度あからさまぁw」

 なんか、車内でゲラゲラと笑われてしまった。

「……お兄さんから聞いたんですか?」

「そんなの顔を見てたら分かるよ」

 私はいつもお花屋さんで、そんなに好き好きオーラを振りまいているのだろうか。お兄さんから、むしろ嫌われないか心配になってきた。

「女の子の恋は応援したい派なんだけど、カガミンは辞めたほうがいいよ」

「なんでですか?」

「オレは、カガミンと同じ地元のヤツなんだけどさ、カガミンは東京に来る前はホストしてたんだけど、お店で2番目にモテてたからさーいまでも綺麗なお姉さんと一緒にいる系でしょ?」

「それは……たしかに」

 自分も本当は彼女がいるのではないかと思っているのだから、綺麗なお姉さんの出どころはホスト時代のお客さんだったりするのだろうか?

「それでーその店で一番モテてたのが、誰だと思うー?」

「……?」

「オレオレ!!」

「そうなんですね…」

 えと、自慢話がしたくて、私のことを車に乗せたんだろうか。シマさんには申し訳ないのだけれど、シマさんは私のタイプでは、全然ない。

 お兄さんとシマさんが人気なお店が気になるかといったら、そんなでもない。

 お兄さんが、べつの女の人を口説く場所を想像したくもないし。

 正直、シマさんが一番人気なことが疑問でしかない。もしかしたら、地方の田舎の生まれなんだろうか………………。

「あー、信用ゼロだなぁー」

 今日、出会った人の信用問題どうこう言われても、少しだけ困ってしまう。

「カガミンの昔の写真とかみたくない?」

「見たくないです」

「んー?どうして?」

「いまのお兄さんの事にしか興味ないので……昔がどうとか、あまり関係ないかなって」

「ふーん。女の子って好きな人の全部が知りたいもんだと思ってた」

 知りたいことはたくさんある。でも、それも全部本人の口から聞きたいんだ。

 他人の意見や評価は、あくまでもその人の主観でしかない。

 シマさんが嘘つきだとか思っているわけではないんだけど、他人の意見で好きな人を決めつけてしまいたくない。

「シマさんがお優しい方なのは、よくわかりました。でも、仮にお兄さんが遊び人だったとしても、それでも好きなんです。ただの尊敬なのか、憧れなのか、好きの種類がなんなのかも分からないんですけど…」

「ごめんごめん。困らせるつもりはなかったんだけどさ」

 私自身、自分でも友達になんて紹介したらいいのか悩んだんだから、この恋が辛いものかもしれないことはよくわかっている。

『ー目的地に到着しましたー』

「あっ」

 大宮駅が目の前からでてきたので、私は車を降りた。

「ありがとうございました。」

「あーちょっと待って、オレとも仲良くしてくれる?」

 振り返ると、まるで小型犬がぷるぷる震えているような顔のシマさんと目が合った。

「はい。お兄さんの親友さんなんですよね?もちろんですっ」

 とびきりの笑顔を添えて、私は自分の家へと歩きだした。

「大人なら誰でもいいわけじゃないのねぇ……こりゃ強敵だわ」

 今日は家に帰る足取りが軽かった。

 早くお兄さんからの手紙を読まなくちゃ。


あとがき

手紙には、お兄さんの名前が書き込まれていたけれど…無音ってなんて読むんだろう…みゅうと??

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ