プロフィール公開
ガーベラのメモを渡した日の夕方に女子高生から、きれいな便箋の手紙をもらった。
女子高生は、いまから塾へ行くのだという。高校3年生の受験生と手紙のやりとりしてていいのだろうか。
俺は、きれいな便箋をポケットにしまった。
1日の仕事が終わり、自分のマンションに帰ってきてから封筒を開ける。
そこには綺麗な文字が並んでいた。
ボールペンではない色ペンで書かれている文字がなんだかとても高校生という感じがした。
『名前: 畑谷 美鈴hataya misuzu
血液型: A型
部活:吹奏楽部(引退)
受験:都立大
趣味:音楽
学校:8〜15時 塾:18〜
ガーベラの花言葉は前向き!』
そこには、女子高生のプロフィールが書かれていた。
「俺のことが知りたいって言っていたのに、自分の紹介からまずするんだ」
律儀な子なんだな。という雰囲気がただよっている。
今年の初めまでは、部活に打ち込んでいて楽器とか背負っていたんだろうか?あまり周りにいないタイプだなーと思った。
俺も音楽は嫌いではないが、テレビで音楽番組すら、最近ではまともに見なくなってしまっていた。音楽を聞く機会は、街中で流れている楽曲とかくらいかもしれないな。5歳以上も離れていたら聴いている音楽とかも全然違うんだろうな。
自分も同じように手紙を書こう。と、メモとペンを手に取った。
『名前: 加賀 無音kaga myu-to
血液型:A型
部活: 元バドミントン部
大学: 私立短大
趣味: 料理
仕事: 不定休
花言葉を調べてくれたんだね。
ガーベラの花言葉には、他にもあって「限りなき挑戦」っていうものあるんだ。いまは、受験に全力で頑張れ!受かるように応援してるよ』
受験生に恋と勉強の両立は難しいだろうなぁ。この大学がどれくらい入りづらいところなのかは知らないけど。
とにかく、俺が受験の邪魔をしないようにしないと…。なにより、俺みたいな人間が、彼女にとって似つかわしくない事をどうしたら伝えられるんだろうか。
そもそも、自分は学生時代にどんな恋をしていたんだったっけかな。
思い出したところで、ろくな恋愛してきているわけがなかった。
俺は、また明日会ったとき用に、手紙の返事を上着のポケットにしまった。