再会
(美鈴目線)
大学生活が始まった。私はというと、なんと一人暮らしを始めていた。
いままでお母さんに全てを任せてきた私からすると、洗濯も料理も一人で大丈夫なのかな?という不安があった。
4月の大学では、新入生カンパで早くも自分のサークルへの入部希望を募ってゴタゴタしていた。
「畑谷!」
「…………え?」
何故か、私の受かったキャンパスに、小野くんがいた。
「え、なんで?」
「東大落ちた」
嘘でしょ…?塾でA判定の小野くんが東大落ちるわけないと思うんだけど??
「もう、どのサークル入るか決めた?」
あっさり私の隣を歩き始めた小野くん。
「サークルには入らないと思う」
「そうなの?」
まだ、大学生活になにも慣れてないし、入るにしてももう少したってからかなという所だ。
「じゃ、今日はもう帰るの?」
「うん。近くでバイトとか探そうかなって、寮の周り散策する」
仕送りもあるけど、家にばかり頼っていられないし。
「せっかくだし、散策一緒にしてもいい?」
「え、小野くんもバイトするの?」
まさか、学校でもバイトでも小野くんとこれから一緒になるのかな。
大学の正門を出ると、目の前が花屋さんだった。
そこには、ミュートさんによく似た青年が働いていた。
「(私、ついに幻覚まで見えるようになっちゃったんだ…」
その人は大きな花束を抱えていて、年配の方に優しく微笑んでいる。
「どうぞ」
「畑谷!あれ!」
どうやら小野くんも花屋のお兄さんがミュートさんに似ているということが言いたいらしく肩を叩かれる。
道の向こう側で、青年も私達に気づいたのか手を振ってくれた。
「………本物?」
私は、まだ信じられないまま、車がこないことを確認すると、花屋さんへと走った。
「おかえり。美鈴」
そこには、エプロンが変わったミュートさんが立っていた。いつもと変わらない声と笑顔と美しさで出迎えてくれた。
夢じゃないのかな。
「大学受かったんだね。よかった」
「ミュートさん……」
なんだか、まだ信じられない。
「いままでのしがらみと縁を切りたくて、前の花屋さん辞めちゃったんだよね。なにも連絡できなくて、ごめん」
「あ…あの、また花屋さん選んでくれてよかったです。私、花屋さんで働いているミュートさんが好きで…」
好きという言葉を口にすると、なにがか溢れてしまいそうだった。
私の薬指を見たミュートさんが驚いたような表情を向ける。
「ソレ、見つけてくれたんだね」
「え……あ、勝手にすいません!!」
そういえば、ミュートさんの家から勝手に持ってきてしまったんだと気づく。
「ううん。美鈴ために買った物だから、いいよ。ところで、今は少年くんと付き合てるの?」
「付き合ってません!!」
勘違いされたくなくて大きな声がでてしまった。
「そうなんだ。俺がもう一度、美鈴を好きになるチャンスってもらえたりする?」
「も、もちろんですっ」
ミュートさんから真っ直ぐに見つめられて、すごい勢いで頷いた。
ミュートさんは私の指輪がついた左手を持ち上げる。
「やっぱり少し緩かったよね。今度ちゃんとしたサイズに手直ししにいこうか」
「あ、はい………」
ミュートさんの前にいると、いつでも自分がおとぎ話の中のお姫様みたいな気分だ。
そんなミュートさんは、私に1枚のメモを取り出した。
「これ、俺のナンバーなんだけど、スマホ新しいのにしたから、まだ誰も登録してなくて、一番初めに登録するのが美鈴がよかったから、貰ってくれる?」
「はい!!よろこんでっ」
おしまい




