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好きってこういう事

(女子高生目線)


ー数日前の話ー


 私がミュートさんの家に遊びに行った日。

 唇にキスをしてもらえなかったけれど、ようやく好きな人から「付き合おう」と言ってもらえた。

 まるで、自分が物語のお姫様になったみたいに、目の前には片膝をついた王子様のような振る舞いをしたミュートさんがいた。

 まっすぐに私の顔を見つめながら、ミュートさんが私に問いかける。

「これで、安心して勉強に集中できる?」

 と、あくまでも私の受験を優先してくれようとしていた。

 ミュートさんのまわりにたくさんの女の人がいる中で、私はちゃんと恋人なんだろうか。

「もっと…ちゃんと確かな何かが欲しいです…」

 自分の中では、それがキスのつもりだったんだけど、ミュートさんは私が成人していたとしても高校生だからダメって事みたいだった。

「そうだなぁ…アレでも書く?」

 そういって、引き出しから取り出してきたのは、婚姻届だった。…そんな、薬の常備薬を取り出すみたいにでてくる物ではないような気がするのは、私だけでしょうか?

 サラサラとミュートさんは自分の部分を躊躇わずに記入してしまった。

「はい。美鈴に預けるよ」

 渡された婚姻届に戸惑ってしまう。

目に見える確かな物が欲しいって言ったのは自分だけど、受け取ってしまっていいんだろうか。

 もしかして、この婚姻届を書くというシナリオすら、ミュートさんの中ではありきたりな行動の1つなのだろうか?

「預けるけど、出すのは高校卒業したあとか、大学卒業する時かな。どっちがいいかは、美鈴が選んで?」

 高校を卒業して、すぐに出してしまうと、あと4ヶ月もしたらミュートさんと夫婦になるって事?!

 なんだか、それだと恋人同士のデートとか出来なくなってしまいそうで嫌だなって思ってしまった。

 その日は、とりあえず受け取って帰った。

 言葉で「付き合う?」って聞かれたことよりもこの薄い紙のほうが重たさを感じるのはなんでなんだろうか。

 純粋に嬉しい。嬉しすぎて夢なんじゃないか?とさえ思える。

 家に帰ったら額縁にでもいれて飾りたい。いや、でも持ち歩いているほうが、モチベとしては上がるかもしれない。

 そんなわけで、学校に行くにも忘れず持っていた婚姻届は、シマさんに歌舞伎町まで連れて行かれた日に無くなってしまった。

『また、書いてあげるよ』と、ミュートさんは言っていたけれど本当かな…。

 あと何週間かでクリスマスがやってきてしまう。そんな中、送り合っている手紙で私は『クリスマスは一緒にすごせますか?』という質問に、あっさり『ごめんね。クリスマスはお店が忙しいんだ』と、断られてしまった。

 恋人になって初めてのクリスマスなのに、一緒にいられないみたいだ。

「なんでなんでなんで〜」

 塾で思わず叫んでしまっていた。

「どうしたんだよ」

 呆れ顔で小野くんが、私の元へやってきた。

 小野くんは、花火の日に公園に置き去りにしてしまったというのに、あの後もなんだかんだと優しい男の子だった。

 人として、とても良い人だとは思う。いまとなっては、きっと私に好意があるんだろうなーくらいは分かるけど、やっぱり小野くんにキュンを感じたことはない。

 もし、異性の小野くんが告白してきて婚姻届を差し出したらどうだろう?と想像してみる。

 おそらく、お金持ちの家の出たとしても、2億円を宝くじで当てた億万長者だとしても私は1ミリも喜んだりしないのだろう。…恋って、案外分かりやすいのかもしれない。

 私にとってのミュートさんってそんなにも大きな存在なんだ。自分自身は、ミュートさんのことあまりにも知らないけれど、知りたいという気持ちが一番あるんだもん。

「おーーい(妄想の世界へ行くな」

「ハッ!たいした悩みではないので、おかまいなく…」

「頑張って話しかけた人間をあしらうのやめてくれる?」

「小野くんみたいな真っ当な人間がハナシカケルベキ人間デハナイので…」

 小野くんに話を聞いてもらいたいけど、それは同時にミュートさんにクリスマスには会えないってことを自分が口にしなければならないわけで…。

「おいおい、大丈夫かよ。でも、最近成績上がってきてるじゃん」

「それは、まー…」

 きっと御守りのおかけであって、私は勉強にちゃんと集中できているかと言われると…うにゃうにゃ…。

「小野くんは、もし好きな人が難病だったらどうする?」

「は?(オッサン難病指定者なのか?いや、むしろ畑谷か?」

 結局、最近まで悩んでいたことを小野くんにも聞いてしまった。

「好きな相手が難病だから、諦めるかどうかみたいな話?」

「…うん」

「それなら、諦めないだろ。だっていまどきの医療がどれだけ発展してると思ってるんだよ」

 なんか、そう言われてしまうと、そうかーという気持ちにならなくもない。

「だって、もしも難病だから別れるって言った1年後とかに、それを治せる薬が出来ることだってあるだろうし、その時後悔するかもしれないよ?」

「たしかに」

 それは、とても賢い人の考え方だなって思う。やっぱり皆、そんなに悩まず答えがだせちゃうものなのかな。

 いま小野くんが言ったことをまとめると、つまり今年のクリスマスは諦めて来年のクリスマスを待てばいい。って、だけの事なのかな…。なんだか、頭の流れがぐちゃぐちゃになってきちゃった。

「うーん…」

 結局、答えが出なかった私に対して、小野くんはやっぱり優しかった。

「答えは自分の中にしかないんじゃないか?」

「そうですよね!!」

 やっぱり今年は受験だけど、今年のクリスマスは今年だけのものだ!!と思う。ミュートさんが仕事なら、職場にいつもどおり会いに行って、なにかプレゼントだけでも渡せないかな。迷惑かな。

 結局、恋人になったと言っても、そこまで大きな行動をとれずにいる気がする。どうしたら、恋人っぽい事ができるんだろう。

 


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